アマゾンの模倣品対策 – Part 1 – カタログ方式の罠

2021年12月18日

こんにちは。弁理士の越場です。

相変わらずアマゾンでの模倣品対策のご相談を継続的に受けます。

一部は未だに相乗り排除に関するものもありますが、最近は模倣品対策に関連するものがほとんどを占めるようになりました。

メーカー担当者の間では、アマゾンでの模倣品対策は難しいという事実は広く知られるようになってきました。例えば以下に面白い記事があります。

Amazon、偽ブランド品を推奨 AIが見過ごす (日経新聞)

そもそも日本で偽ブランド品が売られているのか?と思われるかもしれませんが、実はたくさんあります。偽ブランド品にもいろいろな種類がある(例えばパロディ商品を含むのかなどの議論があります)のですが、わかりやすい「ザ・ニセモノ」も、ECを中心にたくさん売られているんです。

ECショッピングモールは集客力が大きいので、本物の商品に紛れさせて偽物を売る輩が跡を絶ちません。その中でも特に対策が難しいのは、アマゾンです。理由はいろいろあるのですが、やはりカタログ方式という特殊なサイト構成が最大の原因です。

カタログ方式とは、「同じ商品は同じ商品ページで売る」という方式です。例えば出店型の楽天市場では、同じ商品であっても、出品者がそれぞれ商品ページを作ります。つまり同じ商品に対して、複数の商品ページが並列的に存在することになります。

一方でカタログ方式を採用するアマゾンでは、同じ商品に対して作成される商品ページは、1つのみです。一番最初にその商品を販売する人が商品ページを作成し、二番目以降に出品する人は、既存の商品ページに出品をします。その商品の販売ページが存在するのに、新しく商品ページを作成することは規約違反です。

アマゾンの考えは、同じ型番の商品は誰が売っても中身は同じなんだから、商品ページは1つにまとめた方がシンプルだ、というものです。これは実際そのとおりだと私もユーザーの立場では思うのですが、本物の商品ページに偽物を紛れさせて売ることが可能なので、模倣品対策が非常に難しくなってしまいます

なにせ、商品ページ自体は本物なのです。商品画像も、タイトルや説明文のブランド名もすべて本物なのですから、商品ページの情報からその商品が偽物であることを見破るのは、技術的に不可能です。

さらにいえば、試買(本物か確かめるために実際に商品を買ってみる)をしてみて、届いた商品が偽物だったとしても、それが「混合在庫」であった場合は、その商品を誰が販売したか、購入者にはわかりません。(これは多少複雑なので別の機会に記事にします。)

カタログ方式を採用するECモールは、日本の大手ではアマゾンのみです。楽天市場、Yahoo!ショッピング、Wowma、ヤフオク、メルカリ、Qoo10、いずれも出店型ですので、モール内で仮想店舗を開店するイメージです。同じ型番の商品であっても、各店舗が「売り方」「見せ方」に独自性を出してそれぞれ商品ページを作成しなさい、という仕組みになっています。

これはユーザーとしては不便に感じることもあるのですが、模倣品対策という観点からはありがたい制度です。なぜならば、偽物を売る人が、偽物の商品の販売ページを作成するわけですから、画像や文章などの情報に不自然な点が見られることが多く、サイト上のみで商品が偽物であることを判断しやすいからです。

このような事情で、そもそもアマゾンは他のモールと比較して模倣品を発見しづらいのですが、アマゾンでの模倣品対策が難しい理由は、他にもあります。上記日経の記事ではその点にも触れているので、次回以降詳しく解説していくことにします。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています

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