カナダ現行商標法の手続きはあと16日

2021年12月18日

こんにちは。弁理士の越場です。

ということで、ようやくカナダの改正商標法施行日が近づいてきました。

施行日は6月17日ですが、13〜16日は知財庁のシステムアップデートのため出願できないので、現行法の下に出願できるのはあと16日間ということになります。

カナダといえば世界でも珍しいというか、悪評高い商標制度をずっと続けてきたのですが、ようやく大幅改正に至りました。

今回の改正の目玉は、やはりニース分類の採用でしょう。これまでカナダは、ニース分類を採用せず、区分制度すらありませんでした。区分という概念がないため、どれだけ広範に商品・役務を指定しても同一料金だったのですが、今後は区分ごとに費用が発生します。

現行法下の印紙代
出願料 : CAD 250
登録料 : CAD 200
合計  : CAD 450(固定)

新法下の印紙代
出願料 : [1区分目]CAD 330
      [2区分目]CAD 100
登録料 : —
合計 : CAD 230 + 100N(N:区分数)

新法では、登録料が廃止されます(出願料に含まれます)。

このように、2区分以下なら新法の方が印紙代は安いのですが、注意すべきは代理人手数料も区分数に応じて増加することから、実際は複数区分の出願は新法ではすべて値上がりすることになります。

そこで現地代理人から複数区分の出願をするならいまがチャンスだよ!という営業メールがきたのでこの記事を書いているわけです笑

ただし、ニース分類を採用したことで、ついにカナダもマドプロに加盟することになりました。マドプロルートでカナダを指定するときの個別手数料は、1区分目がCHF251(約CAD335)、2区分目がCHF76(約CAD100)ですので、国内出願とほぼ同額です。

つまりまとめると、以下のようになります。

結論
区分数にかかわらず、新法化でマドプロ利用するのが安い(この世の真理)。
直接出願する場合は、複数区分の出願はいまのうちにしておくのが安い。1区分ならば新法の方が安い。

今回はいわゆる大改正で、他にも重要な変更がいくつかあるのですが、残り16日間のうちに出願するかどうかの判断に影響するのは、上記ニース分類採用による費用変更の点のみです。

その他の変更点で特に興味深いものは、例えば「出願ベース」の廃止があります。

現行カナダ法には「出願ベース」という概念があります。これは、出願が「使用ベース」、「使用予定ベース」、「本国出願・登録及び外国使用ベース」のいずれかに基づかないといけないというもので、使用開始日や外国出願の情報などを要求するというものです。

今回の改正で、出願ベースが廃止されます。これにより、出願時に必要な情報が減り、より出願しやすくなります。また同時に、使用宣言書の要求もなくなります。

また、新たに分割出願制度が導入されます。日本では馴染み深い制度ですが、カナダ法はユニークで、親出願・子出願のいずれもが登録された場合は、最終的にそれらが統合されます。これによって、更新手続きはひとつの登録についてのみ行えばいいことになります。

他にも、存続期間が15年間から10年間に短縮されたり、味やにおいなど非伝統的な商標も保護されるようになったりという改正もあります。

これまで使いづらい制度のせいでカナダ出願を後回しにしていた企業は、この機会に出願を検討してもいいかもしれません。

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