ぶっちゃけオンライン商標登録サービスってどうなの?

こんなテーマでブログを書くと怒られそうですが、以前から思うことがあるので、週末にこっそり書きます。

「オンライン商標登録サービス」・・・という呼び方が正しいのかわかりませんが、要は商標調査や出願依頼をオンラインで完結できるサービスがあります。この部分の説明は省略するので、以下の記事をお読みください。

TORERU、COTOBOX、NOMYNE。 今話題のオンライン商標登録サービスを徹底比較(BRAND TODAY)

2年前くらいからメディアに取り上げられる機会が増え、知名度が上がったように思います(そもそもサービス開始がその頃のはずです)。

これらのサービスを使えば、オンラインで商標調査ができ、そのまま依頼ができます。多くの特許事務所は、ウェブサイトのメールや問合せフォームから相談を受け、その後弁理士とやり取りをしながら手続きを進めます(当所もそうです)。

一方でオンライン商標登録サービスでは、ウェブ上で自分で調査できるので、結果がその場でわかることに加えて、「一度弁理士に相談してしまうと、その後出願をやめるとか他の特許事務所に依頼するとか言い出しづらくなる」という心理的ハードルをクリアできることに需要があるのだと思います。

そしてなにより、作業を自動化することで、手数料を大幅に下げることに成功しています。

結論から言いますと、私はオンライン商標登録サービスは素晴らしいと思います。これまで弁理士が手作業でこなしていた作業をコンピュータにやらせることで、手数料を下げられる。明らかに時代の流れに順行していますよね。

逆にいうと、コンピュータで自動化できることをわざわざ手作業して手数料を稼ぐ従来の弁理士のビジネスモデルは、もはや完全に崩れているということです。そんなことは機械にやらせて手数料を稼がせるモデルの方が優れていることは明らかです。

私がこう考える理由はもうひとつあります。今後、特許庁における審査は、どんどんAIが行うようになります。それが高い精度でできるようになると、逆説的ですが、審査を行わなくてもよくなるようになります。世界では、商標を無審査で登録するのが趨勢です。今後日本もその流れに巻き込まれ、無審査制度を採用する可能性が高いと考えています。(※わかりづらいと思うので、これは別の機会に記事にします。)

そうなると、審査に通るための調査や出願という作業の価値は下がっていきます。いずれにせよこの部分の自動化・低コス化は必然なのです。

ただ現段階で本当にすべての商標出願がオンライン商標出願サービスでできるかというと、そんなことはないと思うんですよね。

オンライン出願サービスでは、文字商標の先行商標調査がウェブ上で手軽にできます。ただこの調査は、弁理士に依頼しても一瞬でできることがほとんどです。弊所では無料で対応していますし、そもそも依頼のハードル自体が低いです。

例えば私は弁理士会等の無料相談を多数担当していますが、多くの相談者が出願予定の商標を持参されます。先行商標の有無をその場で調査しますが、ほとんどのケースで、十秒程度で結論が出せます。

たまに類似度が微妙な先行商標が見つかり、判断が難しいこともありますが、そのような微妙な判断はどうせオンライン商標出願サービスでもできません。

「AIを用いて類否判断をしている」という宣伝文句が独り歩きしていますが、称呼から類似度順に類似商標をリスト化するシステムなど大昔から特許庁の無料DBでできますし、この部分の技術は正直大したことはありません。少なくとも商標の調査で「AIが云々」というのはただの広告です。

結局のところ、先行商標調査という観点からは、オンライン商標出願サービスは、J-PlatPatを素人向けに少し使いやすくしたという程度でしかありません。

商標出願を扱う弁理士の感覚として、先行商標調査は、全作業中、5%程度の重量しかありません。まれに類否判断が難しいケースは大変ですが、上述のとおりこれはオンライン商標出願サービスでも弁理士が行っています(プログラムが判断できるのは「類似度が高い商標登録がある」という部分までです)。

実は出願準備作業で最もウェイトが大きいのは、指定商品・役務の決定です。これには専門知識と経験が必要です。

オンライン商標出願サービスでは、キーワードから関連する商品リストを表示し、ユーザーはその中から指定する商品を選択するようです。

それでもよいのですが、指定商品は商標権の効力範囲そのものですから、これを適切に選択することは非常に重要です。当所の商標出願手数料の根拠の大部分は、専門的観点から適切な指定商品を選択することにあると考えています。

例えば、アパレル関連商品を広くカバーする「被服」という概念があります。アパレル全般をざっくり押さえようと思ったら、オンライン商標出願サービスでは、おそらく「服」などのキーワードで検索して、広い概念である「被服」がリストに出てくるので、それを指定するのだと思います。

しかし、その商標を将来外国にも出願しようとしたとき、例えば中国では「被服」はかなり狭い範囲しかカバーされないので、適切に権利保護できないことになります。そもそも日本でも、どこまでが「被服」に含まれるかをきちんと調べないと、実は希望する権利が取得できない事態を招きかねません。

結局のところ、オンライン商標出願サービスは、「J-PlatPatよりも初心者に優しい独自のデータベースを提供するサービス」ということができます。ですので、

  1. 類似商標が見つからないケースで、
  2. 指定商品が明確にわかる場合、

には、1万円程度の手数料で商標出願を外注できるので、積極的に利用されるとよいと思います。

逆に少しでも微妙な部分があるケース、特に指定商品の選定に不安があるとか、将来外国にも出願するかもしれないケースでは、最初から弁理士に依頼したほうが安全です。

実際、オンライン商標出願サービスで出願した案件に拒絶理由通知が発せられ、中間処理から受任するケースがありますが、出願自体に問題があるケースも多くあります。本来であればここを整えてから出願するのが弁理士の仕事なのですが、コストと一緒にこの作業を削っているわけです。

この部分を省略できるか判断できない場合は、数万円余計にかかるかもしれませんが、弁理士に相談しながら出願準備を進めることをお勧めします。そうでないと、中間処理に出願以上の費用がかかることになります。

もちろんオンライン商標出願サービスも今後いろいろとアップデートされるでしょうから、弁理士の業務から商標出願の代理がなくなる未来は近いと思います。

実際当所では、上記2つの要件を満たす、ある意味特許事務所にとって楽で「オイシイ」商標出願は、既に業務から消えたと考えています。商標出願では、弁理士の判断を仰がなければ進められない案件、外国出願の可能性を含む案件にターゲットを絞っています。

繰り返しますが、テクノロジーを用いて手作業の手数料を省略する流れは当然ですし、素晴らしいことだと思います。いまはまだ十分に自動化できるほど技術が発達していないということだと思います。

一部の弁理士は、「商標出願を1万円で受任するなんてけしからん!そんなことをすると他の弁理士が食っていけなくなる!」と公式・非公式に対応しようと考えているようですが、完全に時代に逆行していますよね。

かつて、弁護士には「松・竹・梅」のランク分けがあり、「松」は受任料1千万円スタートだったと聞いたことがあります。これが本当かは知りませんが、少なくとも弁護士の受任料は案件ごとに異なるのが一般的です。しかし、商標出願には手間や難易度の差があるにもかかわらず、現在の料金体系では、すべての案件の弁理士手数料は一律です。オンライン商標出願サービスなど、様々な形のサービスが登場することで、出願人に費用面での選択肢が生じることは歓迎すべきことだと思います。

※オンライン商標出願サービスでは、識別力等(商3条関係)は検討すらされないようです。明らかに識別力を欠くケースを中間から受任することがありますが、そもそも商標の選択を間違えている(誰にも登録できないのだから先行商標が存在しない)わけですから、いくら安くても出願自体が無駄だったということになります。このあたりも、現段階では弁理士に相談したほうがよいという理由付けになりそうです。

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