大学生からの質問に答えます’21[知財系アドベントカレンダーもっと]
こんにちは。弁理士の越場です。
今年もやってきました、知財系アドベントカレンダー。昨年に引き続き参加させていただくことになりました。※私は「もっと」に参加します。
でまあ今年もネタがなくて困っているわけですが、そろそろタイムリミットなので、これ以上考えるのをやめました。私は例年、立命館大学の法学部学生向けに、弁理士の仕事内容を紹介する講義をしています。約1時間講演をして、30分質疑応答という構成にしているのですが、そこで質問しきれないものを、シートに記入して提出してもらうことになっています。基本的に個別の回答はしていないので、今回ここでいくつかに回答することにしました。
- 外国人と打ち合わせをするとき、どのような話題から入るのか?
- 理系が多い世界で、困った経験はあるか?
- ド●キなどに売っているパクリ商品は違法ではないのか?
- 弁護士同様、企業に勤める弁理士はいるのか?
- 模倣品の個人輸入が違法となった後、侵害品であることについて善意と悪意の場合で、輸入者の罰則は異なるのか?
- これまで模倣品の個人輸入が違法でなかった理由はなにか?
- なぜ中国に出張所を作ったのか?
- パロディとパクリとの違いはなにか?
- 弁理士の男女比をみると男性の方が圧倒的に多いが、なぜか?
- どうすれば、何かひとつのことに熱中できるのか?
- 先願主義は理解したが、他人が使用している商標を勝手に登録できる制度を維持する理由はなにか?
- 偽物が売られていることを見つけたら、自分にできることはないか?
- 弁理士として、転売問題に対応できることはあるか?
- 文系でも、理系弁理士と同様の案件を扱うのか?
- 海外との取り引きが多いとのことだが、英語以外にどのような(言語的)素養が必要か?
- 特許の審査官はどのような経歴の持ち主か?
- どのように英語を勉強したのか?
- 弁理士は税関と仕事で関係することはあるか?
- 20年間で特許が切れた後、その特許はどうなるのか?
- 法学部出身で有利と感じたことはなにか?
- 登録されている商標を知らずに使用してしまっても侵害となるのか?
- 弁理士の社会的意義は何だと考えるか?
- たけのこの里の立体商標が登録されたというニュースをみたが、このような自然にもともと存在する形状の登録をすることもできるのか?
- 法律事務所には、弁護士と弁理士の両方が所属することがあるそうだが、「弁護士>弁理士」という序列なのか?
- 企業に勤めようと思わなかったのはなぜか?
- 他社の特許はどうやって潰すのか?
- 指定商品の範囲外ならば、他社ブランドのロゴを使用できるのか?
- アビソク事務所のabisokを逆から読むと「コシバ」になるというのは遊び心があっていいですね!
- 特許出願は国ごとに必要とのことだが、出願の仕方は国ごとに違うのか?
- 特許や商標の出願時に住所氏名を記載する必要は理解できるが、個人情報まで公報で公開する意味がわからない
- なぜ「フランク三浦」が許されたのか?
- 個人で商標登録している人にも、みんな弁理士がついているのか?
- 模倣品を潰してもいたちごっこではないか?いつか知的財産権が不要になる時代はくるのか?
- すべての国で特許出願するのがよいのか?
- 商標の類否等については、何らかの基準があるのか?
- なぜ著作権は登録制度ではないのか?
- なぜ弁理士はマイナーな職業なのか?
- ネットで購入する際に偽物を見分ける方法は?
- 商標を出願するベストなタイミングは?
- 偽物を潰すのにはかなりの手間がかかるようだが、なぜそんな仕事を選んだのか?
- 弁護士も弁理士業務ができるはずだが、それを行う弁護士はどれくらいいるのか?
- 既成語を組み合わせた造語であれば、商標登録できるのか?
- 法改正により、問題のない個人輸入も禁止されるようになるのか?
- 正直なところ、弁理士以外に興味があった職業はなかったのか?
- 仕事を投げ出したいと思うのはどんなときか?
- 外国で特許を取るときに、日本の弁理士が手続きできるのか?
- 特許出願に対して特許庁からNGが出たときに修正して許可されることはあるのか?許可されるくらいなら最初からNGは出さないのでは?
- 日本の弁理士は海外のそれと比べてどれほどのものなのか?
- 商標登録した人が、商標権を他人に売るなどということは実際にあるのか?
- 弁理士のキャリアアップにはどんな方法があるか?
- コロナ禍で海外の弁理士とコネクションを作りづらいので、いま弁理士になるのは不利なのか?
- 他の士業との報酬体系の違いは?
- 弁理士になるために大学1年生からやるべきことはなんですか?
- 中国で行政摘発をする際に、多数の模倣品が存在する中でどのような優先順位をつけているのか?
- 商標制度を周知するためにやっていることはあるか?
- 特許庁の審査官は弁理士資格を持っているのか?持っていないならば、専門的素養がないまま審査をしているのか?
- 弁理士はAIに取って代わられるか?
それぞれの国の天気や政治、その出張の感想、家族の話などが多いです。
理系でも比較的分野ごとに専門が分かれていて、対応できない案件はたくさんあるので、誰もが自分にできる仕事をやるだけという点で、あまり差はないと思います。できない案件はその分野の専門の弁理士に回します。
すべてのパクリが違法なわけではありません。大手の販売店は、できるだけ事前に調査をして、違法性がないと思われるもののみを販売しています。
たくさんいます。詳しくはドクスペを!
いずれの場合でも、輸入者は侵害者となりません。侵害者は海外の貿易会社などです。
「業として」の行為のみを対象とする産業財産権制度の基本的な枠組みが前提としてあり、かつ、そもそも個人輸入問題の影響がそれほど大きくなかったためです。
中華料理がおいしかったからです。
日本の場合は、特に違いがないようです。類否判断においては、純粋に商標/商品等表示として類似するかが問題となるようです。本当はこのテーマで記事を書こうと思ったのですが、時間が足りませんでした…。
理系に進むのがほとんど男性だからだと思います。
これは私が、「何でもいから学生時代にひとつだけ、これだけは日本中の誰にも負けないというものを身につければ、その経験は人生のどこかで必ず活きてくる」という話をしたものに対してですね。いろいろやってみて、これは面白いと思ったことを楽しみながら頑張るとよいと思います。
制度設計の問題でしょう。先使用の立証負担を考えると、先使用主義を採用することは、あまり合理的ではありません。形式的に出願日を基準にする実務上のメリットが大きいということだと思います。
お客様相談窓口でいいので、メーカーに連絡してあげましょう。
基本的にはありません。
人/事務所によります。個人で開業している事務所だと、文系でも特許出願を扱う弁理士は少なくないと思います。弁理士になってからもいろいろ勉強します。
とりあえず英語ができれば十分です。それ以上は特殊能力としてアピールできます。
基本的には国家一種に合格して、特許庁に採用されます。それ以外のルートも少しあります。
大学受験の段階で英語はかなり得意でした。大学に入ってからはリスニングを勉強しました。
輸入差止申立や認定手続において、弁理士は代理人となれます。
なくなります。再度出願しても特許権を得ることはできません。その後は誰でも自由に特許発明を実施できます(例外的に特許権が20年以上存続できることもあります、主に製薬分野)。
文章力でしょうか。もちろん民法などをベースに知的財産法を捉えられるというのもあります。
はい、過失の推定がなされ、これを覆すことは非常に困難です。
将来のトラブルを未然に防ぐことだと思います。
あくまでもたけのこの里の立体形状が登録されただけと考えていましたが、言われてみるとたけのこの立体形状に近いものが登録されたとも捉えられますね笑 とはいえ、「お菓子」の分野で、たけのこの立体形状を他に使っている人が(ほとんど)いないから登録になっているので、今後使えなくなることによる第三者の不利益は限定的であり、そのような独占は商標法が一般に予定するものです。
そもそもぜんぜん違うものを比較しようとすることに無理があるのですが、弁護士になる方がだいぶ大変なことは間違いありません(それが序列に直結するわけではない点にはご注意)。
朝起きれないからです。
一般には、無効審判などの制度を活用して、先行文献を探してきて、新規性/進歩性違反の事由を見つけ出して主張します。
同一又は類似の範囲外であれば、原則として使用できます(一部例外あり)。
ありがとうございます。
ざっくりとは国際的に調和がとれるように制度改正されてきました。とはいえ細かい部分ではいろいろと違いもあり、それらを考慮した書類作りが必要となる点で大変です。
ですよねーお役所なので画一的なことしかできないのです。というのは半分冗談で、公報のように容易に入手できる資料では、完全な個人情報は公開されないような配慮がなされるようになってきました。とはいえ出願書類や登録原簿は誰でも入手できてしまうので、結局個人情報を非公開にしたまま権利取得することはなかなか難しいのが現状です。
純粋に商標の類否を判断した結果です。パロディであること(パクっていじったこと)は考慮しないというのが最高裁の判断なのだと思われます。
自分で手続きする人もいます。
模倣品の撲滅は人類の夢ですが、実現は難しいでしょう。また知的財産権の役割は、単に模倣品を排除するのみならず、自社のアイデアやブランドの内容を明確化し、それを独占的に活用することで産業の発展に寄与することも含まれるので、やはりこのような制度設計が維持されることは好ましいと考えます。
それはコスト的/手続的になかなか大変です。それらのバランスを考慮しながら、ベストな範囲を選んでアドバイスするのも弁理士の役割です。
特許庁が審査基準というものを作成しています。訴訟段階では過去の判例/裁判例の影響も増します。
著作物の創作は、老若男女誰もがすることから、登録制度を採用すると煩雑になりすぎてかえって不便だからです。
根暗な人が多いかr(ry 嘘です。おそらく、弁理士のクライアントはメーカー(主に大企業の知財部)がほとんどなので、一般の方が関わる機会が少ないからだと思います。企業知財部の方にとっては超メジャーな職業です。中小企業の経営者などにあまり知られていないのは我々弁理士の努力不足なので、今後頑張らないといけませんね。
とりあえず値段が異常に安いものはたいてい偽物です。
事業を始める前です。
膨大な数の偽物をこの目で見て、それらを放置せず対応することに使命を感じたからです。
出願業務であれば、ほとんどいないと思います。無効審判などの当事者系審判や、審決取消訴訟であれば、知財系弁護士がそれなりに関与しています。
ケースバイケースです。
権利侵害しない個人輸入であれば、もちろん自由に行なえます。
正直なところ、弁理士にはいまでもあまり興味がありません笑 企業経営などは憧れましたが、弁理士業のほうがよっぽど簡単なので、いまはこれでいいやという気分です。
仕事の山が永遠に減らないときです。
その国の弁理士に依頼する必要がありますが、その依頼を日本の弁理士を介して行うことも一般的です。
そのようなケースは非常にたくさんあります。特許出願は、どの範囲まで広く取れるか、出願時にはわからないことがよくあります。そのため、希望する範囲で出願をしてみて、審査官の判断を仰ぎ、それを確認しながら適切な範囲に修正(「補正」といいます)して権利化していくのが一般的です。
たいしたものですよ!
よくあります。
私は開業しているのでよくわからないのですが、より給料の高い事務所や企業に転職するのが一般的なのではないでしょうか。それ以外にも弁理士が活躍できる場はたくさんあるので、個性や能力に応じて可能性は無限大だと思いますよ!
コロナもうすぐ終わるよ!そして条件はみんな同じなので、弁理士だけが不利ということはないです。いまはオンラインなど様々な方法でコネクションを作る方法がありますよ。
他をよく知らないのですが、弁護士は成功報酬で稼げるのが羨ましいなあと思います。税理士は顧問料が主な収入源だと思いますが、弁理士の顧問はどちらかというとタダ働きのような位置づけです。
予備校に通えば弁理士にはなれるので、大学では語学と、自分が興味がある分野に力を入れるとよいでしょう。
ケースバイケースです。もちろん侵害規模が大きいところから攻めるのが王道ではありますが、悪質性だったり、商品の安全性だったり、様々な要素を考慮して決定します。
YouTubeはめんどくさすぎるので一瞬でやめました。twitterフォローしてくれたらたまに関連するツイートするよ!
wwwそういうこと言ったらダメです笑 みなさんまず審査官補といって、見習いのような立場から始めて、勉強しながら一人前の審査官になるのです。もともと国家一種に合格するような優秀な方々ですから、問題はないのですよ。
弁理士業務の一部はAIが代用するようになると思います(既にそれなりに代用されています)。弁理士業務のすべてをAIが代用するようになることは、いまのディープラーニングをベースにしたAI技術では到底不可能だと思います。
いやーみなさん、よい視点ばかりですね!
私のとりとめもない話で、少しでも知的財産について興味を持ってもらえたなら嬉しいです。
このような優秀な若者がたくさんいる日本の将来は明るいですね。
なんでもいいので学生時代に「これだけは誰にも負けない」というものをひとつだけでも作り出すと、その経験はその後の人生で必ず役に立ちますよ。
ではでは!