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知財業界での夢と希望 -弁理士の日記念ブログ企画2021に3日遅れで参加します-

ということで、今年もやってきました、弁理士の日記念ブログ企画。

7月1日が弁理士の日であることから、知財系ブロガーが同じテーマで記事を書くというイベントを、弁理士の内田先生が企画してくださっています。

私も毎年参加させていただいて(今年で何年目でしょう、6-7年くらい連続参加だと思います)、今年のテーマは「知財業界での夢と希望」ということで、何を書こうかなあと・・・。

うーん、別に夢も希望もない業界だとは思いませんが、特に明るい未来が想像できるわけでもなく、もしかして早く寝れば夢を見れるかと思ったのですが、朝までぐっすりでした。

おそらく、特許事務所はまだまだ儲かるよ!みたいな話は他の方が書かれると思うので、私はもう少し「知財業界」を広く捉えてみます。

そう、知財業界というのがどの範囲を指すのかよくわかりませんが、特許事務所だけではないというか、特許事務所ってむしろ産業財産権の登録の部分しか扱わないので、今回はそれ以外の範囲について考えてみようと思います。

わかりやすいところで、著作権の話をしましょう。最近こんなニュースがありました。

江頭2:50、配信動画の登場曲に著作権侵害の指摘「え~、マジで」

いつもエガちゃんねるで江頭さんが登場して『エガちゃんです』ってやる時に曲流れてるじゃないですか。あの曲が『著作権侵害』というのが来まして、あの曲が使えなくなってしまいました」と報告を受けた。

ちょっと具体的な内容がわかりませんが、いずれにせよ、芸能人ですら自分でコンテンツを作って発信する時代になり、著作権がより身近になってきたように思います。

もちろん、他人の権利を侵害しないことは大切ですが、同様に、自分のコンテンツも正しく保護されるべきですから、より多くの人たちが、著作権について理解しなければいけない時代になったといえます。

またこんなニュースもありました。

編み物動画、著作権は ユーチューバー同士の法廷闘争へ

動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿した編み物動画について、「著作権侵害にあたる」とユーチューブに通知され、損害を受けたとして、ユーチューバーが別のユーチューバーらを相手に、110万円の損害賠償を求めて京都地裁に提訴した。

これなんかは、YouTuber間のトラブルが、著作権を媒体として訴訟で争われている例です。

著作権は、登録や公示の制度がないので、そもそも権利が発生しているかわかりづらいですし、ましてや権利侵害の有無などは裁判でガッツリ争ってみないと判断できないことも多くあります。

誰もがコンテンツクリエイターになりえる時代ですから、やはり著作権についての基本的な素養はますます重要となるでしょう。

今度は商標に目を向けてみます。ちょっと古いですが、こんな話題がありました。

電通、「アマビエ」商標出願→取り下げ ネットでは物議、広報「活用を再検討」

電通の商標出願が明らかになると、ツイッター上では「庶民の疫病退散の習慣を登録して金儲けか…」「信じられない」「思いつく限りのジャンルで名称を独占しようとしてる」などと反発する声が相次いだ。

商標法の規定をみるかぎり、仮に取り下げられなかったら、「アマビエ」は登録できた可能性が高いように思われます。とはいえ、一企業が「アマビエ」を独占するなという感情も、わからなくはありません。

こうした正解のない問題についても、事業活動を行う中で、リスクをとりつつ何らかの結論を出さなければいけません。

電通のような大手でなくとも、同じような問題は生じます。

「ぴえん」商標出願で使えなくなる? アパレル会社申請にネット物議も「保険的な意味」

特許庁のデータベースで公開されると、SNS上ではまたたく間に注目を集めた。多くは「え、これ許されるの?」「これアウトでしょ」と懐疑的な見方だ。

他人に先に登録されてしまうと、その後自分はその商標を使用できなくなってしまう。だから安全のために先に出願しておく。商標制度の基本であり、本来褒められることがあっても、批判される理由はないはずです。

ところが、このようなケースでは、炎上リスクがあります。商標戦略はそこまで考えないといけない時代なのですね。

同じく商標で、最近こんな話題もありました。

レペゼン地球の商標問題

音楽グループ「レペゼン地球」が会社を乗っ取られ、商標登録の名義も会社にあるので「レペゼン地球」を使えなくなった

これも昔からよくある、芸能人の商標問題。芸名やグループ名を登録する際に、いろいろな事情から、芸能事務所(マネジメント会社)の名義で商標登録するも、その後関係が悪化しマネジメント契約が終了する際に、商標権の帰属が問題となるケースです。

YouTuberなど、素人がいきなり芸能人になるケースが増えています。多くの方はそもそも商標登録に意識が向いていませんし、仮に登録しようとしても、上記のような細かいトラップがいくつも潜んでいます。


このように、著作権や商標などは、素人・一般人であっても非常に身近なものとなっています。誰もが発信者であり、コンテンツの利用者でもある時代です。

知的財産?特許?そんなの大企業のものでしょ。という時代ではもはやありません。知財を大企業だけのものと捉えると、どんどん狭く深くマニアックな方向に進んでいきます。それはそれで価値がありますが、知的な活動は誰であれ、個人でも中小企業でも、みんながするものです。

発信者側はそうしたアイデアや表現が適切に保護されることを知って、またユーザ側もそれらの正しい使い方を理解することで、私たちの生活はより豊かなものになっていくのだと思います。

インターネットのインフラが整い、コロナのおかげでその新しい利用方法も次々と誕生しつつあります。知的財産の裾野はどんどん広がって、日本人に求められる知財リテラシーは、ますます高まっているといえます。

権利を適切に保護し、みんなが正しく活用する世の中。そんな時代には夢と希望があふれていますね!専門家として、そのお手伝いができるのであれば、私の未来も夢と希望にみちみちています。そう、知財業界にはもはや夢と希望しかないのです!アイラブ知財!ありがとうー!!!

結局、標準文字商標ってなんなの?

知財系アドベントカレンダーというイベントに参加しています。アドベントカレンダーというのは、「12月1日から24日までクリスマスを待つまでに1日に1つ、穴が空けられるようになっているカレンダー」のことだそうです。

転じて、この期間に毎日1つずつ、リレー式にブログを書いていくWebイベントが、おそらく米国あたりで流行っていて、今年日本ではパテントサロンさん主催の「知財系アドベントカレンダー」及び「知財系もっとアドベントカレンダー」が立ち上がったので、僭越ながら「もっと」の方に参加させていただくことにしました。

しかし!とにかくネタが見つからない!しかもこれまでの9日間、先に書かれた先生方の記事が素晴らしすぎてもう・・・。もし来年も参加させいただくことがあれば、私みたいな者が最初に書いて、低いハードルから始めることが他の参加者の役に立つはずなので、早めに立候補することにします(今年これまでに書かれた先生方にはぜひ反省していただきたい笑)。


とまあ前置きが長くなりましたが、散々ネタに迷っていたところ、昨夜サウナで瞑想していてふと気付きました。そういや私、標準文字商標ってよくわかってないや(てへ)。私が弁理士になった頃には既に導入されていましたが、外国には未だにこんな制度がない国もありますし、「ロゴと標準文字、どっちで出願する?」という問いに対する一般的な回答はまだ見つけられていません。

ここ数年クライアントから、「他の弁理士に相談したら、標準文字の方が権利範囲が広いから、ロゴ1ではなく標準文字で出願することを勧められた」と言われることが増えました。おそらく一定の割合でこのような立場を支持する方がいるのだと思われ、発明協会で無料相談に応じていても、支援員(発明協会の職員)が同様の説明をすることがあり、「ちょっと待て待て!」となったこともあります。我々弁理士が商標の出願をするときには、常に権利行使の場面を念頭に置いて検討するわけですが、では標準文字商標の権利範囲ってどんなもんでしょう?

そもそも商標法における標準文字とは、「特許庁長官があらかじめ定めた一定の文字書体」2をいい、標準文字商標制度とは、「文字のみにより構成される商標のうち、特許庁長官があらかじめ定めた文字書体によるものをその商標の表示態様として公表し、登録する制度」3をいいます。特許庁長官があらかじめ定めた文字書体というのが何なのか知りませんが、公報を見てみると、一種の明朝体のようです。

ここで重要なのは、標準文字制度とは、特許庁長官が定めた書体による文字商標を(公開するのみならず)登録する制度だという点です。これは別のクライアントですが、「ロゴで文字のデザインを登録し、標準文字で文字の読み方を登録する」という指導を受けたと言う方がいました。しかし、標準文字制度では、特許庁長官が定めた書体の商標が登録されるわけですから、その書体を離れて、文字列(ネーミングとでもいうのでしょうか)が登録されるわけではありません。その意味で、標準文字でも、普通の文字商標でも、権利範囲は変わらないはずです4


標準文字制度って、特許庁・出願人双方の負担を減らす(例えばテキストの方が容量が小さい)ことを目的として導入された5わけですが、これは当然、権利範囲が変わらないことが前提になっているはずなんですよね。

では、標準文字商標と普通の文字商標の権利範囲が同じとして、ロゴ(飾り文字)と標準文字商標の権利範囲はどうなるでしょうか。標準文字は、「出願人が特別の態様について権利要求をしないとき」に選択される文字なわけですから、その文字が本来有する形状のみの外観的特徴を有することになります。一方でロゴは、これに加えて、文字に施された装飾も外観に特徴を与えることになります。その意味で、デザイン的要素が類否判断に与える影響が大きいので、むしろロゴのほうが権利範囲が広いことが多いのではないかという気もします。

例えば、(我ながら謎な例ですが、)「特許庁」と「特許序」は、標準文字だとおそらく非類似ですが、デザイン次第では、ロゴ同士が類似することはあるかもしれません。要するに、称呼も観念も非類似なとき、特に日本では文字同士の外観の類否はあまりみないので6、全体として非類似となりがちですが、ロゴであれば、外観の特徴が共通する場合、類似範囲に落ちてくることもあり得る点で、実はロゴのほうが権利範囲が広いんじゃね?という考え方もあるのではないでしょうか。

そもそも、商標制度の趣旨からは、実際に使用する商標を登録するのが本線であって、ロゴがあるのに標準文字で登録するというのは、例外的とまではいいませんが、テクニカルな観点によるところが大きいはずです。そう考えたときに、上記の検討が正しいかはともかく、使用するかわからない標準文字の登録をわざわざ選択7するほどに、本当に権利範囲が広いのかは、一度立ち止まって検討してもいいのではないでしょうか。


ところで、最近標準文字が流行ってる理由のひとつに、アマゾンブランド登録2.0が、当初標準文字商標を登録要件としていたことが挙げられます。数年前8にアマゾンブランド登録がアップデートされ、商標登録が、ブランド登録の要件とされることになったのですが、開始当初は、標準文字制度がある国では、(ロゴではなく)標準文字商標の登録が必要でした。

そのため、日本や米国でロゴの商標を登録していても、わざわざ標準文字を出願し直す必要があり、ちゃんと商標登録していた人こそ、時間とコストをかけないとブランド登録できないという事例が多発しました。こうした経験から、どうせ多くの商標はアマゾンでブランド登録するのだから、最初から標準文字で出願しておいたほうがいいという価値観が広まったように感じています。

しかし、その後アマゾンの運用が変わり、いまではロゴ商標の登録でもブランド登録できる9ので、やはり上述のとおり、ロゴがあるのに標準文字で出願するメリットは、あまりないように思います。


ということでまとめると、

1.ロゴがない場合
標準文字で出すしかない

2.ロゴがある場合
1)ロゴのデザイン要素が大きい場合:ロゴを出願
2)ロゴのデザイン要素が小さい場合:どちらでもOK

3.ロゴがたくさんある場合
最もメインで使用するロゴを出願する+標準文字も出願

4.ロゴがコロコロ変わる場合
とりあえず標準文字という戦略もある?

という感じでしょうか。まあ、こう言っては元も子もないのですが、使用する商標は(色違いを除いて)すべて出願すべきなのです。しかしこういう意見は弁理士のポジショントークと捉えられてしまうので、なかなか大きな声では言えません。本気で強い商標登録をアドバイスしたいだけなんですよ、いやまじで!

結論 標準文字商標、やっぱりよくわからん!


脚注

2019年を振り返る

もうすぐ2019年も終わります。今年もいろいろありました。
特に後半は通常業務以外の仕事が多くあったので、どんなことをしたか、年末にまとめてみようと思います。

今年度は、弁理士会の委員会等をたくさん担当しています。

委員会
貿易円滑化対策委員会、国際活動センター、中央知財研究所、知的財産権支援センター、国際情報センター(大阪)
無料相談
関東会(東京)、関西会(大阪)、京都地区会、京都商工会議所、知財総合支援窓口(京都)
外部派遣
IIPPF(中国PJ)

定例会議を除いた、単発のイベント等で、私が報告を担当したものは、以下です。

5月13日
特許庁と打ち合わせ

6月6日
経済産業省・模倣品対策室と打ち合わせ

6月12日
財務省関税局と打ち合わせ

8月1日
YKKさん主催のB.P.P.で報告(中国商標 悪意の出願対策)

9月13日
韓国SJC(ソウルジャパンクラブ)との意見交換

9月20日
IIPPF中国PJ情報収集Gで報告(悪意の商標出願&使用への対抗 〜 Supreme Italia の事例を題材に 〜)

10月17〜19日
高松出張(税関セミナーで閉会挨拶)

10月25日
特許庁と打ち合わせ

10月28日
特許庁と打ち合わせ

10月30日
財務省関税局と打ち合わせ
経済産業省模倣品対策室と打ち合わせ

11月1〜11日
スイス・ジュネーブ出張(SCT42に参加)

11月20日
IIPPFインターネットPJアマゾン勉強会で報告(アマゾンの模倣品対策 ver. 2019)

11月21日
立命館大学で講演(大学院ウィーク)

11月22〜23日
福岡出張(Nikonさんの模倣品対策セミナーに出席)

12月5〜6日
香港出張(BIPアジア参加)

12月11日
青山学院大学SMIPRPで英語プレゼン(WCO税関職員とのラウンドテーブルディスカッション)

12月13日
コクヨさんの模倣品対策セミナーで閉会挨拶

12月20日
立命館大学で講演(法学部キャリア科目「社会に生きる法」)

12月24日
中央知財研究所合同研究会に出席(商標:著名商標に対する特別な保護、特許:韓国での知財裁判所会議)

特に11&12月は、これら以外に定例会議や無料相談が計11件あり、ジュネーブ・香港・博多の出張で21日間出張をしていて、完全に仕事がパンクしました。

しかも、プレゼン資料を毎日のように作成しなければならず、出張の報告書も山積みで、最後には熱が出て一週間ダウンしてしまい、大晦日の今日まで普通に仕事をしています(それでもまだ終わりません)。

無給の仕事ばかり引き受けすぎて業務への影響が大きいので、次年度は少し会務を減らそうと思います。その代わりにやろうとしていることがあるので、これは年明けに報告しますね。

そしてあちこちでプレゼンをしているので、研修のネタが溜まってきました。当所では、無料で社内研修を実施しています。これも講座が大幅に増えそうなので、年明けに改めて宣伝します。

とにかく、今年(特に後半)は充実していましたが、そのぶん通常業務が溜まってしまいました。来年はこのあたりを調整して、また新しいことに挑戦しようと思います。

今年一年間、大変お世話になりました。来年も面白いサービスをどんどんローンチしますので、引き続きよろしくお願いしますね!

模倣品の輸入規制のための提言 – 日本弁理士会からの提言の紹介

なんと3ヶ月もブログをサボっていたようです。大きな案件がいくつかあり、また関西と東京の往復が多くなかなか時間がとれませんでした。

さて、こちらをご覧ください。

模倣品の輸入規制のための提言

月間パテント2019年8月号 69頁

昨年度(平成30年度)の、日本弁理士会貿易円滑化対策委員会にて作成した提言です。一応私も著者名の端に名前が載っているので、ご紹介します。なお、あくまでも個人の立場で勝手に紹介するだけですので、内容に不正確な点などがあれば、責任はすべて私に帰属します。お問い合せは私に直接お寄せください。

また本稿では、法的な部分の説明はかなりざっくりなものとして、根拠条文の記載も省略します。法的な解説は次回の投稿で詳しくみていきます。

さて、「模倣品の個人輸入問題」について聞いたことがあるでしょうか。

「模倣品の輸入」ならわかりやすいですよね。偽物を輸入することは、商標権侵害となります。(※商標権以外の知財権でも事情は同じですが、ほとんどが商標権侵害物品なので、本稿ではとりあえず商標権について書きます。)

税関で差し止められた貨物の98%が商標権侵害
出典はこちら

偽物を輸入しようとする行為が税関で見つかると、輸入が差し止められ、没収されてしまいます。

しかし、個人的に使用する目的で、模倣品を輸入する行為は、商標権侵害とはならないので、税関で没収されず、自由に輸入できてしまいます。

なぜかというと、商標権侵害となるには、「業として」輸入することが条件となっているからです。「業として」とは、反復継続的に行われることを意味するので、個人的に使用するということは、「業として」に該当しないのですね。

さて、いま、有名ブランドの偽物が1点、輸入されようとしています。税関が発見し、差し止めようとしてくれています。しかし税関は、いきなり没収することはできません。

税関で輸入を差し止め(没収)するためには、認定手続という手続きを経る必要があります。これは、その商品が本当に偽物なのかを、税関が確認する手続きです。

輸入者と商標権者の両方に「認定手続開始通知書」が送られ、認定手続が開始されます。それに対して、双方とも、意見書を出すことができます。税関は、両方の意見を聴いて、その商品が本物か偽物かを判断します。

ところがここで、輸入者側から、「これは個人輸入です。」という内容の意見書が出されてしまうと、その商品が偽物であったとしても、税関は輸入許可せざるを得ません。個人輸入ならば、「業として」の輸入ではないので、商標権侵害とならないからです。

こうして、せっかく税関が偽物を見つけても、そして権利者が「これは偽物です」という意見書を出しても、輸入者から「個人輸入です」と宣言する意見書が出されてしまったら、偽物が堂々と輸入されてしまうのです。

これを悪用して、偽物をわざわざEMSなどの小口で輸入するケースが激増しています。

税関で差し止められた物品の92%以上が小口郵便
出典はこちら

こうして、税関が努力をして、大量の模倣品を発見してくれているにもかかわらず、「個人輸入です」という紙切れが出されてしまうだけで、すべて輸入許可しなければならない状況が続いています。税関の作業は税金で行われています。どうせ最終的にリリースしなければならない偽物を、わざわざ見つけて、認定手続を行う必要はあるのでしょうか?

そもそも、日本という国において、堂々と偽物の輸入を認める合理的理由はあるのでしょうか?実際、こうして輸入された偽物の多くは、日本のインターネットで転売されています。

いまの時代、インターネットで簡単に偽物が購入できます。見慣れたECサイトを思い出してみてください。明らかに偽物とわかる商品が販売されていると思います。

その商品が、日本の倉庫に入っていたら、違法です。しかし海外の倉庫に入っていたら、日本の法律では違法とはいえない。それを個人輸入すれば、堂々と輸入できてしまう。中国から、EMSで2日もあれば日本に届きます。倉庫の場所が日本か中国かで違法だったりなかったりする。これはおかしくないでしょうか?

このような状況に鑑みて、日本弁理士会では、以下の提言を行いました。

提言は、2つの内容からなります。

第1段階
模倣品の輸入規制の強化のために,喫緊の対応策として,「輸入……する行為」(商標法2 条3項2号)の主体を外国の販売業者等と認定判断する余地を肯定する解釈論を採用することを検討すべきである。

第2段階
また,かかる解釈論が採用・適用し難い場合を念頭に,同検討と並行して,さらに抜本的な解決のための立法論として,模倣品(1)を業としてではなく輸入する行為(但し,輸入者が譲受け時に模倣品であることを知らず,かつ,知らないことにつき過失がない場合を除く。)を商標権侵害と見做す規定を商標法37条に新規に創設する(但し,商標法78条の2所定の罰則からは除外する。)ことを検討すべきである。

前者は、少しわかりづらいかもしれません。商標法には、「輸入」という用語が出てきますが、定義は記載されていません。つまり、状況に応じて、解釈することができるわけです。

いまは、通関=輸入と解し運用されています(通関説)。これは、関税徴収時の考え方に倣ったものと考えられます。つまり、貨物が本邦(日本)に物理的に届いても、関税が納付され、輸入許可されるまでは、外国貨物のままです。輸入許可された段階で初めて、内国貨物になります。この、外国貨物から内国貨物への切り替えの時点(すなわち通関時)を、輸入と解釈しているのです。

一方で、陸揚説(荷揚説)という考え方もあります。これは、文字どおり、貨物が本邦に陸揚げ・荷揚げされた時点をもって、輸入されたと解釈する考え方です。例えば、覚醒剤の密輸に対しては、この考え方が適用されており、港に陸揚げされた段階で(税関を通る前でも)、覚醒剤を輸入したとして処罰されます。言い換えると、陸揚説とは、貨物を本邦に持ち込むときに、その貨物を実効支配し、危険を負担している人が輸入者となるという考え方だといえます。

さらに、上述のとおり、ほとんどの個人輸入は、国際郵便で送られてきます。条約により、国際郵便は、購入者が引き取った時点をもって輸入したこととされます。つまり、購入者が貨物を受け取るその瞬間までは、海外の発送業者がその貨物を実効支配しており、危険を負担しているといえるのです。

そうすると、陸揚説を採用した上で、国際郵便については、購入者が商品を引き取り、貨物の実効支配と危険負担が移転する時点を「輸入」と解釈する余地がありそうです。通関時点ではまだ外国の発送業者が貨物を実効支配及び危険負担しているのですから、彼らが輸入者となるわけです。外国の発送業者は、一般に、業としてその貨物を発送している=日本に輸入しているわけですから、「個人輸入である」という言い訳は通じなくなります。

このような解釈を採用することで、個人輸入を力づくで止めてしまおうというのが、第1段階の内容です。

上が通関説(現行解釈)、下が陸揚説(弁理士会が提案する解釈)

ただし、これにもいろいろと抜け穴があるかもしれません。発送業者側も、個人的に発送しているように装うなどの対策をしてくることが予想されます。そこで、将来的には、商標法の間接侵害の規定を改正して、模倣品であれば個人輸入であっても商標権侵害とする規定を入れてしまおうというのが、第2段階です。

ただこれは、産業財産権法が「業として」の要件を入れている意義にある意味反するものなので、いくつかの考慮をしています。例えば、対象を、「模倣品」に限定してます。ここで「模倣品」とは、デッドコピーのようなものに限定したものを想定しています(オリジナルを知って真似した点、及び「類似」まで広くない点にご注意ください)。また、刑事罰の対象から除外しています。

こうすることで、いま問題になっている偽物の個人輸入の大半は止められるようになるだろうと考えています。まだまだ課題はありますが、関係者の皆さんが努力を続けていらっしゃるので、実現できると信じたいと思います。

注:「個人輸入です」と嘘の意見書を出して偽物を輸入して、転売する行為は、違法ですし、犯罪です。絶対にやめましょう。

知財業界での初体験 – 弁理士の日記念ブログ企画2019

ということで今年もやってきました、弁理士の日。そう、本日7月1日は弁理士の日です。たぶん弁理士制度が始まった日です。

毎年この日に、「独学の弁理士講座」の内田先生がブログイベントを企画してくださっています。前ブログから引き続き、今年で5年くらい続けての参加となります。

今年のテーマは「知財業界での初体験」ということで、何を書こうかこのところずっと考えていたのですが、弁理士になって10年以上経ち、当初のことはほとんど覚えていません。

おそらく最初は中間処理などをしていたはずなのですが、当然自分が出願した案件ではないですし、記憶にありません。初めての特許出願、初めての翻訳、初めての拒絶査定、初めての審判請求、初めての特許庁への電話、初めての外国代理人の営業対応・・・ダメです、何ひとつ覚えていません笑

手続的なことは何も思い出せないので、初めて中国・義烏に行ったときの話を書こうと思います。

私は数年前に、中国浙江省の義烏という街に駐在していたことがあります。そのあたりはこの記事などで紹介しているのでご興味ある方はお目通しください。

駐在といっても、ある日思い立って「中国に出張所を作って国際化だぜイヤッホー!」と縁もゆかりもない土地にスーツケースひとつでフラッといきなり移住しただけなのですが、もちろん引っ越す前には出張ベースで何度か行っていました。

義烏には、世界最大の卸売市場、通称「福田市場」があります。とにかく巨大な市場で、雑貨・日用品ならば見つからないものはまずありません。

福田市場の2区。1〜5区からなります。

初めて福田市場を訪れたときのことは、いまでもよく覚えています。上海でちょっとした用事があり、そのついでに義烏にも寄ったのですが、それまで中国には広州など南方にしか行ったことがなく、初めての上海、そして義烏だったので、トラブル続きでした。

ネット情報では「上海南駅」から特急で行くと書いてあったのですが、前日の食事で一緒だった中国人から「いまは上海虹橋駅から新幹線が出てるよ」と聞き急遽ルート変更。たまたま泊まっていたホテルが虹橋駅に近かったのはよかったのですが、駅で英語がまったく通じない。外国で列車のチケットを買うのに困るという初体験をしました。

帰りはもっと大変だったのですが、知財と関係ない話はtogetterにまとめたのでそちらをご覧ください。

さて福田市場に行ってみて、小さいブースが無数に並び本当に何でも売っている様子を目の当たりにして、心底圧倒されたのをよく覚えています。当時の写真ではありませんが、こんな感じです。

2日半かけて端から端まで見て歩きました。完全に足が棒でした。

訪問前から、「何か買って帰国後にヤフオクで売れば旅費くらいでるよ!」と聞いていたので、探しながら歩いていたのですが、とにかくあらゆる商品が売っているので、何を買っていいのかわかりません。

そんな中、たまたま目についた商品がありました。キャラクターものでした。

写真が残っていないので、同種の商品を探してきました。これです。

出典: THE MARY SUE

おわかりの方も多いと思います。Angry Birds のUSBメモリです。

Angry Birds は世界的に人気のスマホゲームで、上記商品はそのキャラクターを用いたものです。値段やロット、詰め合わせの条件などを交渉して、よさそうなので買おうということになり、最後にいろいろ雑談をしていると、出身地の話題になりました。

「ん?日本だけど」「えっ、日本?!ダメダメ、これは売れないよ!」

「なんでだよ!まさかこれ・・・コピー・・・?!」「日本では売っちゃダメだよ(てへ」

そう、ただの偽物だったのです。

この店は同様にキャラクターもののUSBメモリをたくさん売っていました。まさか「ザ・偽物」をこんなに堂々と売っているとは、当時の私は思いもしませんでした。世間知らずだった私は、偽物は悪いやつらがコソコソ裏ルートで取引していると思っていたのですが、日本を少し離れた世界の現実を目の当たりにして、大きな衝撃を受けました。

この体験が、私を模倣品対策の道に進ませました。Angry Birds は外国企業のキャラクターですが、ジブリやワンピースなど、日本のキャラクターの商品もたくさんありました。いま振り返れば、ほぼすべてコピー品だったのでしょう。

こうした商品がこんなに堂々と売られる世界はなんとかしないといけない。そう思って義烏に行って模倣品対策を本格的に始めました。

これが私の「知財業界での初体験」です。

その後いろいろと勉強する機会があり、偽物にもいろいろな種類があって、対策もそれぞれ異なることを知りました。これらの話はまたいずれ。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています

アマゾン・トランスペアレンシーってなに?

アマゾントランスペアレンシーというプログラムがあります。

アマゾンブランドレジストリー(アマゾンのブランド保護施策)の一環()で提供されているプログラムで、現段階では米国のみで展開されています。

ざっくり紹介すると、アマゾンが発行するQRコードを商品パッケージに貼っておくと、FBA納品時にアマゾンが真正品であることを確認してくれるというものです。

コードが偽造されている場合など、真正品と確認できないときは、偽物と推定されて、アマゾンの模倣品排除プログラムに従って処理されます。

コードは商品単位(※型番単位ではなく、個々の商品ごとにユニークな文字列)で与えらます。なので、ある商品を購入してみて、そのコードをコピーしてももう遅いというわけです。

アマゾンから発行されたコードが商品に貼られていると、アマゾンは正しいコードが貼られた商品のみを真正品として扱うので、少なくともFBA経由では模倣品が販売されなくなることになります。

これまでアマゾンには、権利者から、フルフィルメントセンター(倉庫)に納品された商品の真贋判定をしろ(つまり「あんたの倉庫に偽物が入っているんだから人間の目でチェックしてこい」)というプレッシャーがかけられていましたが、納品された商品が本物か偽物かをアマゾンが判断することは現実には難しく、厳しい対応を迫られていました。トランスペアレンシーはそれを解決する手段といえます。

さらにトランスペアレンシーは、アマゾン外の店舗で販売される商品でも利用できます。例えばスーパーで売られている商品のQRをスマホアプリで読み取ることで、購入者はその商品が本物かどうかチェックすることができます。

つまりアマゾンは、FBA納品時には自らコードをスキャンして本物かチェックしますし、そのシステムを外部にも提供してどこでも誰でも真贋チェックができるようにしているのです。

なおオマケの機能として、メーカーは、製造日や製造地、その他パッケージに書ききれない情報をコードに持たせることができます(ユーザーはスマホ画面で確認できます)。

例えばロットごとに細かい情報が変わる商品ならば、都度パッケージを作り直さなくても、トランスペアレンシーで顧客に情報開示できるかもしれません。

というなかなか便利なプログラムなので、昨年米アマゾンの法務担当者と話をしたときに早く日本にも導入しろと言ったところ、2019年度に導入予定という回答がありました。そろそろ半分が終わりますが、さて間に合うでしょうか。

なお、これまで米国でも、パワーブランドというか模倣品対策においてアマゾンと協力関係の強いところから順にトランスペアレンシーに参加できましたが、いまは広く受け付けているようです。クライアントに紹介しろと連絡がきたので、ブログ記事にしてみました。米アマゾンで販売されているメーカーさんは参加を検討されてみたらいかがでしょうか。

(※)アマゾンブランド登録は、複数のプログラムからなります。ブランド登録は日本でも提供されていますが、いまのところ Notice and Takedown にのみ対応しています。今後他のプログラムも順次追加されるものと思われます。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています

アマゾンの模倣品対策 – Part 2 – 手軽さの裏側

アマゾン模倣品対策シリーズです(Part1はこちら)。

前回は、カタログ方式に起因して、正規品の商品ページに模倣品が紛れ込むメカニズムを紹介しました。

今回は、そもそもなぜアマゾンに模倣品を出品する人が多いのかについてみていきます。

前回も紹介した以下の記事

Amazon、偽ブランド品を推奨 AIが見過ごす(日経新聞)

ではまさにこの点が検証されています。

模倣品を販売するかにかかわらず、ECモールに出品するには、まず出店登録(アカウント登録)をする必要があります。

アマゾンではこの出店登録の際の本人確認が甘く、偽物を売るような質の低い出品者が登録しやすいと言われています。

約2年前まで、アマゾンの出品登録時に要求されていたのは、以下の情報です。

  1. 氏名
  2. 住所
  3. 電話番号
  4. メールアドレス
  5. クレジットカード番号
  6. 銀行口座

これらの情報の多くは登録時に確認されなかったので、虚偽の情報で出品者登録ができてしまうという問題がありました。

例えば、氏名や住所は、いくらでも嘘の情報が書けます。

電話番号は、自動応答電話で確認コードが送られてくるのですが、携帯電話番号はSIMカードを変えればいくつでも持てますので、事実上本人確認機能を果たしません(匿名のSIMカードを入手する方法はブログでは書けません…)。

メールアドレスは、フリーアドレスが簡単に取得できます。

クレジットカードも、プリペイド式のカードがコンビニで簡単に買えます。

そしてなんと、銀行口座も他人から買うことができます。詳細は書けませんが、「ヤバイことに使う口座」というの市場に出ていて、相場があり〇〇円程度で買えるのです。

いずれにせよ、アマゾンは出品アカウント登録時の本人確認がかなり雑で、誰でも簡単に登録できてしまうという問題があります。

約2年前に、中国人による出品アカウント乗っ取りが問題となり、アマゾンでも出品時に身分証明書の提示が要求されるようになりました。

これによりアカウント作成のハードルが上がることが期待されたのですが、この運用は必ずしも前出品者に適用されるわけではありません。ランダムなのか、独自の基準で選定しているのかわかりませんが、身分証明書の提出は一部の出品者にしか要求されないと言われています。実際、上記日経記者にもこの要求はなかったようです。

その結果、偽物を売る人や、偽物でないことを確認しない人でも簡単にアマゾンで販売できるようになり、結果アマゾンで偽物がたくさん販売される事態に至っています。

例えば楽天市場では、日経記者が実験したとおり、出店時の本人確認をかなりしっかりとやっています。特に個人は、信用情報まで含めてかなり厳しく審査され、質の良い出品者のみが集まるモールにしたいという意志をを強く感じます。さすが上場企業という印象です。

一方でアマゾンは、まずは広く出品者を募り、その後問題のあるアカウントを排除しようという方針が感じ取れます。まさに米国的なプラグマティズムです。

多くの日本企業は、日本人の誰もが知っている有名企業がこんなに雑にサービスを提供するなんて信じられないと思っていますが、まずは出品者に広く門戸を開き、問題のあるユーザーを事後的に排除するのが最も費用対効果がよいというプラグマティズムに基づいた価値観を理解する必要があります。

もちろん、アマゾンも「アマゾンブランド」を重視していて、「アマゾンは偽物がたくさん売られるマーケットプレイス」というイメージがついてしまうことを決して望んではいないのです。

当所も業務でアマゾンの中の人とやり取りする機会は多くありますが、これまでに「偽物を売ってでも手数料を稼ぎたい」と思っていると感じたことは一度もありません。アマゾンも、偽物や偽物販売者はすべて排除したいと常に思っています。

ただ、アマゾンのシステムは米国から輸入されたものであり、日本独自の対応がほとんどできないというジレンマがあります。アマゾンのシステムは米国でも批判を浴びていますが、法制度や文化慣習の差から、日本ではより大きな問題を生じているように思います。

いまや日本のアマゾンは日本企業(アマゾンジャパン合同会社)なわけですから、日本の商慣習により適するよう変わっていくことが望まれます。

ところでアマゾンでは、ユーザーの識別にIPアドレスを利用していると言われています。そのため、シェアオフィスのように複数の事業者が1つのIPアドレスを共有する場合、ある事業者が規約違反でペナルティを受けると、同一オフィスの全事業者が同時に出品停止になったりします。これも、広く出品者を募り、その後問題のあるユーザーを合理的に排除しようというアマゾンのドグマを象徴する事例のひとつのように思います。

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ぶっちゃけオンライン商標登録サービスってどうなの?

こんなテーマでブログを書くと怒られそうですが、以前から思うことがあるので、週末にこっそり書きます。

「オンライン商標登録サービス」・・・という呼び方が正しいのかわかりませんが、要は商標調査や出願依頼をオンラインで完結できるサービスがあります。この部分の説明は省略するので、以下の記事をお読みください。

TORERU、COTOBOX、NOMYNE。 今話題のオンライン商標登録サービスを徹底比較(BRAND TODAY)

2年前くらいからメディアに取り上げられる機会が増え、知名度が上がったように思います(そもそもサービス開始がその頃のはずです)。

これらのサービスを使えば、オンラインで商標調査ができ、そのまま依頼ができます。多くの特許事務所は、ウェブサイトのメールや問合せフォームから相談を受け、その後弁理士とやり取りをしながら手続きを進めます(当所もそうです)。

一方でオンライン商標登録サービスでは、ウェブ上で自分で調査できるので、結果がその場でわかることに加えて、「一度弁理士に相談してしまうと、その後出願をやめるとか他の特許事務所に依頼するとか言い出しづらくなる」という心理的ハードルをクリアできることに需要があるのだと思います。

そしてなにより、作業を自動化することで、手数料を大幅に下げることに成功しています。

結論から言いますと、私はオンライン商標登録サービスは素晴らしいと思います。これまで弁理士が手作業でこなしていた作業をコンピュータにやらせることで、手数料を下げられる。明らかに時代の流れに順行していますよね。

逆にいうと、コンピュータで自動化できることをわざわざ手作業して手数料を稼ぐ従来の弁理士のビジネスモデルは、もはや完全に崩れているということです。そんなことは機械にやらせて手数料を稼がせるモデルの方が優れていることは明らかです。

私がこう考える理由はもうひとつあります。今後、特許庁における審査は、どんどんAIが行うようになります。それが高い精度でできるようになると、逆説的ですが、審査を行わなくてもよくなるようになります。世界では、商標を無審査で登録するのが趨勢です。今後日本もその流れに巻き込まれ、無審査制度を採用する可能性が高いと考えています。(※わかりづらいと思うので、これは別の機会に記事にします。)

そうなると、審査に通るための調査や出願という作業の価値は下がっていきます。いずれにせよこの部分の自動化・低コス化は必然なのです。

ただ現段階で本当にすべての商標出願がオンライン商標出願サービスでできるかというと、そんなことはないと思うんですよね。

オンライン出願サービスでは、文字商標の先行商標調査がウェブ上で手軽にできます。ただこの調査は、弁理士に依頼しても一瞬でできることがほとんどです。弊所では無料で対応していますし、そもそも依頼のハードル自体が低いです。

例えば私は弁理士会等の無料相談を多数担当していますが、多くの相談者が出願予定の商標を持参されます。先行商標の有無をその場で調査しますが、ほとんどのケースで、十秒程度で結論が出せます。

たまに類似度が微妙な先行商標が見つかり、判断が難しいこともありますが、そのような微妙な判断はどうせオンライン商標出願サービスでもできません。

「AIを用いて類否判断をしている」という宣伝文句が独り歩きしていますが、称呼から類似度順に類似商標をリスト化するシステムなど大昔から特許庁の無料DBでできますし、この部分の技術は正直大したことはありません。少なくとも商標の調査で「AIが云々」というのはただの広告です。

結局のところ、先行商標調査という観点からは、オンライン商標出願サービスは、J-PlatPatを素人向けに少し使いやすくしたという程度でしかありません。

商標出願を扱う弁理士の感覚として、先行商標調査は、全作業中、5%程度の重量しかありません。まれに類否判断が難しいケースは大変ですが、上述のとおりこれはオンライン商標出願サービスでも弁理士が行っています(プログラムが判断できるのは「類似度が高い商標登録がある」という部分までです)。

実は出願準備作業で最もウェイトが大きいのは、指定商品・役務の決定です。これには専門知識と経験が必要です。

オンライン商標出願サービスでは、キーワードから関連する商品リストを表示し、ユーザーはその中から指定する商品を選択するようです。

それでもよいのですが、指定商品は商標権の効力範囲そのものですから、これを適切に選択することは非常に重要です。当所の商標出願手数料の根拠の大部分は、専門的観点から適切な指定商品を選択することにあると考えています。

例えば、アパレル関連商品を広くカバーする「被服」という概念があります。アパレル全般をざっくり押さえようと思ったら、オンライン商標出願サービスでは、おそらく「服」などのキーワードで検索して、広い概念である「被服」がリストに出てくるので、それを指定するのだと思います。

しかし、その商標を将来外国にも出願しようとしたとき、例えば中国では「被服」はかなり狭い範囲しかカバーされないので、適切に権利保護できないことになります。そもそも日本でも、どこまでが「被服」に含まれるかをきちんと調べないと、実は希望する権利が取得できない事態を招きかねません。

結局のところ、オンライン商標出願サービスは、「J-PlatPatよりも初心者に優しい独自のデータベースを提供するサービス」ということができます。ですので、

  1. 類似商標が見つからないケースで、
  2. 指定商品が明確にわかる場合、

には、1万円程度の手数料で商標出願を外注できるので、積極的に利用されるとよいと思います。

逆に少しでも微妙な部分があるケース、特に指定商品の選定に不安があるとか、将来外国にも出願するかもしれないケースでは、最初から弁理士に依頼したほうが安全です。

実際、オンライン商標出願サービスで出願した案件に拒絶理由通知が発せられ、中間処理から受任するケースがありますが、出願自体に問題があるケースも多くあります。本来であればここを整えてから出願するのが弁理士の仕事なのですが、コストと一緒にこの作業を削っているわけです。

この部分を省略できるか判断できない場合は、数万円余計にかかるかもしれませんが、弁理士に相談しながら出願準備を進めることをお勧めします。そうでないと、中間処理に出願以上の費用がかかることになります。

もちろんオンライン商標出願サービスも今後いろいろとアップデートされるでしょうから、弁理士の業務から商標出願の代理がなくなる未来は近いと思います。

実際当所では、上記2つの要件を満たす、ある意味特許事務所にとって楽で「オイシイ」商標出願は、既に業務から消えたと考えています。商標出願では、弁理士の判断を仰がなければ進められない案件、外国出願の可能性を含む案件にターゲットを絞っています。

繰り返しますが、テクノロジーを用いて手作業の手数料を省略する流れは当然ですし、素晴らしいことだと思います。いまはまだ十分に自動化できるほど技術が発達していないということだと思います。

一部の弁理士は、「商標出願を1万円で受任するなんてけしからん!そんなことをすると他の弁理士が食っていけなくなる!」と公式・非公式に対応しようと考えているようですが、完全に時代に逆行していますよね。

かつて、弁護士には「松・竹・梅」のランク分けがあり、「松」は受任料1千万円スタートだったと聞いたことがあります。これが本当かは知りませんが、少なくとも弁護士の受任料は案件ごとに異なるのが一般的です。しかし、商標出願には手間や難易度の差があるにもかかわらず、現在の料金体系では、すべての案件の弁理士手数料は一律です。オンライン商標出願サービスなど、様々な形のサービスが登場することで、出願人に費用面での選択肢が生じることは歓迎すべきことだと思います。

※オンライン商標出願サービスでは、識別力等(商3条関係)は検討すらされないようです。明らかに識別力を欠くケースを中間から受任することがありますが、そもそも商標の選択を間違えている(誰にも登録できないのだから先行商標が存在しない)わけですから、いくら安くても出願自体が無駄だったということになります。このあたりも、現段階では弁理士に相談したほうがよいという理由付けになりそうです。

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ブランディングってなんだろう? – 連続研究1 – セントラルキッチン編

弁理士の基軸業務のひとつに、商標登録があります。商標登録ってなぜ必要なんでしょうか?

その商標を独占的に使用するため、安心して使用するため、他人の商標登録を阻止するため、模倣品を排除するため・・・。様々な理由がありますが、突き詰めれば「ブランディング」のためといえます。

では「ブランディング」って何なんでしょう?ビジネスの現場では日常的に用いられますし、最近では「セルフブランディング」などの新しい使い方もされるようになりましたが、その本質を一言で言い表すのはとても難しいです。

そこで、本ブログで、少しずつブランディングの勉強をしていきたいと思います。私が勉強するという意味ですよ笑。

少なくとも現段階で、「ブランディングとは○○である」といえる答えを、私は持っていません。そこで、ブランディングに成功・失敗した身近な実例や、本や論文で学んだことを、ブログに綴っていこうと思います。答えがあってそれを分解して説明するのではなく、気付いたこと・知ったことをアーカイブ化していき、いずれ帰納的に何らかの結論が出せればいいなという軽い企画です。

ということで第1回目は、ブランディングとセントラルキッチンをテーマに考えてみます。

例えば、ラーメン屋を開業したとします。毎日スープの仕込みは大変ですが、味やサービスが評判を呼び、継続的に利益が出るようになりました。そこで、近くに2号店を出店します。

順調に2号店、3号店・・・と店舗を増やしていき、売上も増えました。単純に売上は2倍、3倍・・・となると仮定しましょう。

もちろんそのぶん経費も増加しますが、仕入れや決済手段、従業員管理などは一元化できるので、2倍、3倍・・・とはなりません。例えば材料の仕入れは、複数店舗あっても1度で済みますし、注文量が増えれば単価も下げられます。現金以外の決済手段の基本料金は店舗数にかかわらず一定なので、店舗数に応じて均していくことができます。

つまり、店舗数が増えるほど利益率は高くなる傾向にあるといえます。

こうして順調に店舗数を増やして経営を合理化し、収支が安定してきました。そろそろフランチャイズ化して、自動的に収益が上がるようにしようと考えます。しかし、各店舗でスープの味を統一するのは難しく、またフランチャイジーにとっては仕込みの負担が大きく、事業拡大のネックになっています。

そこで、セントラルキッチンを導入することにします。セントラルキッチンとは、外部の施設で大量に調理をして各店舗に配送するシステムで、店舗は温めなどの簡単な調理のみで料理を提供できるようになります。もちろん品質の維持(美味しいスープを大量に作れるか)などの課題はありますが、これらをクリアして、大幅に経費を削減しつつ店舗数を増やすことに成功しました。

これをブランディングの観点から見たときのポイントはどこでしょうか。店舗数を増やしていき、フランチャイズ展開をするときに、開店前から売上が見込めるということではないでしょうか。

なぜ開店前から売上が見込めるのでしょうか。他の地域で成功した経験から新しい店舗でも成功すると予測できる、という側面ももちろんあるでしょう。しかしそれよりも、ラーメンの評価が定着したことによって、そのラーメンのブランドが顧客を吸引する力を得たからといえるように思います。

「最近話題の博多一風堂が近所にオープンするんだって、行ってみよう!」となる。食べる前なのに一定の評価が得られた状態からスタートできるわけです。無名の状態で出店することと比べて、リスクが大幅に異なることは明らかです。

このように、ブランド自体に顧客吸引力が備わり、事前に売上予測が立てられるようになれば、セントラルキッチンによるスケールメリットを享受することができます。

1店舗→多店舗→フランチャイズと、規模が大きくなるにつれてスケールメリットも大きくなるわけですが、その根幹には「ブランド」があることを忘れてはいけません。

ブランディングの性質のひとつに、「ブランドそのものが価値を持つ」ことが挙げられそうですね。

今回は、博多一風堂、一蘭、味千ラーメン、その他フードコートに入っている様々な種類の飲食ブランドの事例からブランディングを考えてみました(なおこれらがセントラルキッチンを利用しているかは確認していません)。

今日のテーマからは、他にも、例えば暖簾分けやフランチャイズ化自体のブランディングの問題、多店舗展開とブランドの強さの相関関係など、面白い検討がたくさんできそうです。次回以降考えてみたいと思います。

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いまさらですが印紙代がクレジットカードで納付できるようになった件について(弁理士向け)

表題どおり、印紙代がクレジットカードで納付できるようになりました。

クレジットカードによる納付(指定立替納付)

印紙代を立替納付している事務所では、キャッシュフローの改善を期待されたのではないかと思いますが、個人事業主の限度額の壁に当たっている弁理士も多そうです。

業務法人化していれば限度額が大きい法人カードが作れるのかもしれませんが、そもそも法人カードは審査基準が厳しいこともあって、活用が難しいと考える弁理士も多いのではないでしょうか。

たしかに、キャッシュフローという観点からはクレカ納付はあまり役に立たないかもしれませんが、実はこれのもう一つの利点は、カードのポイントだと思います。

仮に1%のポイントがつくとすると、20万円の審査請求料の納付で2000円分のポイントがもらえます。年間50件の審査請求をすれば、それだけで10万円のポイントが貯まることになります。

実際、かねてよりクレカ納付ができた米国では、海外出張をクレカポイントでしている代理人がたくさんいます。印紙代は何らかの方法でどうせ払わなければいけないわけですから、クレカを利用しない手はないはずです。

だから限度額が!・・・というツッコミが聞こえてきますが、そこでお勧めしたいのがデビットカードです。

ご存知のとおり、デビットカードはクレジットカードと同じように買い物等ができ、ただし信用取引ではなくその場で銀行口座から支払いが行われるものです。クレジットカードのような支払いサイトの延長は望めませんが、クレカと同様にポイントがつきます。そして多くのデビットカードには、限度額がありません

弊所では、楽天銀行のデビットカードを使っています(限度額なし)。JCBを選べば1%相当額が楽天スーパーポイントで還元されます(なおそのポイントは更にデビットカードで1ポイント1円に変換して支払いに使用することができます)。

楽天銀行デビットカードを作るには、楽天銀行の口座が必要です。楽天銀行はネット銀行ですので、窓口に行かずオンラインで口座開設できます。

楽天銀行ならば、振込手数料が165円(3万円以下のとき)と安いですし、海外送金手数料は1000円です。チマい話かもしれませんが、チリツモですよね!

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています