作者別: 弁理士 越場 洋

模倣品の輸入規制のための提言 – 日本弁理士会からの提言の紹介

なんと3ヶ月もブログをサボっていたようです。大きな案件がいくつかあり、また関西と東京の往復が多くなかなか時間がとれませんでした。

さて、こちらをご覧ください。

模倣品の輸入規制のための提言

月間パテント2019年8月号 69頁

昨年度(平成30年度)の、日本弁理士会貿易円滑化対策委員会にて作成した提言です。一応私も著者名の端に名前が載っているので、ご紹介します。なお、あくまでも個人の立場で勝手に紹介するだけですので、内容に不正確な点などがあれば、責任はすべて私に帰属します。お問い合せは私に直接お寄せください。

また本稿では、法的な部分の説明はかなりざっくりなものとして、根拠条文の記載も省略します。法的な解説は次回の投稿で詳しくみていきます。

さて、「模倣品の個人輸入問題」について聞いたことがあるでしょうか。

「模倣品の輸入」ならわかりやすいですよね。偽物を輸入することは、商標権侵害となります。(※商標権以外の知財権でも事情は同じですが、ほとんどが商標権侵害物品なので、本稿ではとりあえず商標権について書きます。)

税関で差し止められた貨物の98%が商標権侵害
出典はこちら

偽物を輸入しようとする行為が税関で見つかると、輸入が差し止められ、没収されてしまいます。

しかし、個人的に使用する目的で、模倣品を輸入する行為は、商標権侵害とはならないので、税関で没収されず、自由に輸入できてしまいます。

なぜかというと、商標権侵害となるには、「業として」輸入することが条件となっているからです。「業として」とは、反復継続的に行われることを意味するので、個人的に使用するということは、「業として」に該当しないのですね。

さて、いま、有名ブランドの偽物が1点、輸入されようとしています。税関が発見し、差し止めようとしてくれています。しかし税関は、いきなり没収することはできません。

税関で輸入を差し止め(没収)するためには、認定手続という手続きを経る必要があります。これは、その商品が本当に偽物なのかを、税関が確認する手続きです。

輸入者と商標権者の両方に「認定手続開始通知書」が送られ、認定手続が開始されます。それに対して、双方とも、意見書を出すことができます。税関は、両方の意見を聴いて、その商品が本物か偽物かを判断します。

ところがここで、輸入者側から、「これは個人輸入です。」という内容の意見書が出されてしまうと、その商品が偽物であったとしても、税関は輸入許可せざるを得ません。個人輸入ならば、「業として」の輸入ではないので、商標権侵害とならないからです。

こうして、せっかく税関が偽物を見つけても、そして権利者が「これは偽物です」という意見書を出しても、輸入者から「個人輸入です」と宣言する意見書が出されてしまったら、偽物が堂々と輸入されてしまうのです。

これを悪用して、偽物をわざわざEMSなどの小口で輸入するケースが激増しています。

税関で差し止められた物品の92%以上が小口郵便
出典はこちら

こうして、税関が努力をして、大量の模倣品を発見してくれているにもかかわらず、「個人輸入です」という紙切れが出されてしまうだけで、すべて輸入許可しなければならない状況が続いています。税関の作業は税金で行われています。どうせ最終的にリリースしなければならない偽物を、わざわざ見つけて、認定手続を行う必要はあるのでしょうか?

そもそも、日本という国において、堂々と偽物の輸入を認める合理的理由はあるのでしょうか?実際、こうして輸入された偽物の多くは、日本のインターネットで転売されています。

いまの時代、インターネットで簡単に偽物が購入できます。見慣れたECサイトを思い出してみてください。明らかに偽物とわかる商品が販売されていると思います。

その商品が、日本の倉庫に入っていたら、違法です。しかし海外の倉庫に入っていたら、日本の法律では違法とはいえない。それを個人輸入すれば、堂々と輸入できてしまう。中国から、EMSで2日もあれば日本に届きます。倉庫の場所が日本か中国かで違法だったりなかったりする。これはおかしくないでしょうか?

このような状況に鑑みて、日本弁理士会では、以下の提言を行いました。

提言は、2つの内容からなります。

第1段階
模倣品の輸入規制の強化のために,喫緊の対応策として,「輸入……する行為」(商標法2 条3項2号)の主体を外国の販売業者等と認定判断する余地を肯定する解釈論を採用することを検討すべきである。

第2段階
また,かかる解釈論が採用・適用し難い場合を念頭に,同検討と並行して,さらに抜本的な解決のための立法論として,模倣品(1)を業としてではなく輸入する行為(但し,輸入者が譲受け時に模倣品であることを知らず,かつ,知らないことにつき過失がない場合を除く。)を商標権侵害と見做す規定を商標法37条に新規に創設する(但し,商標法78条の2所定の罰則からは除外する。)ことを検討すべきである。

前者は、少しわかりづらいかもしれません。商標法には、「輸入」という用語が出てきますが、定義は記載されていません。つまり、状況に応じて、解釈することができるわけです。

いまは、通関=輸入と解し運用されています(通関説)。これは、関税徴収時の考え方に倣ったものと考えられます。つまり、貨物が本邦(日本)に物理的に届いても、関税が納付され、輸入許可されるまでは、外国貨物のままです。輸入許可された段階で初めて、内国貨物になります。この、外国貨物から内国貨物への切り替えの時点(すなわち通関時)を、輸入と解釈しているのです。

一方で、陸揚説(荷揚説)という考え方もあります。これは、文字どおり、貨物が本邦に陸揚げ・荷揚げされた時点をもって、輸入されたと解釈する考え方です。例えば、覚醒剤の密輸に対しては、この考え方が適用されており、港に陸揚げされた段階で(税関を通る前でも)、覚醒剤を輸入したとして処罰されます。言い換えると、陸揚説とは、貨物を本邦に持ち込むときに、その貨物を実効支配し、危険を負担している人が輸入者となるという考え方だといえます。

さらに、上述のとおり、ほとんどの個人輸入は、国際郵便で送られてきます。条約により、国際郵便は、購入者が引き取った時点をもって輸入したこととされます。つまり、購入者が貨物を受け取るその瞬間までは、海外の発送業者がその貨物を実効支配しており、危険を負担しているといえるのです。

そうすると、陸揚説を採用した上で、国際郵便については、購入者が商品を引き取り、貨物の実効支配と危険負担が移転する時点を「輸入」と解釈する余地がありそうです。通関時点ではまだ外国の発送業者が貨物を実効支配及び危険負担しているのですから、彼らが輸入者となるわけです。外国の発送業者は、一般に、業としてその貨物を発送している=日本に輸入しているわけですから、「個人輸入である」という言い訳は通じなくなります。

このような解釈を採用することで、個人輸入を力づくで止めてしまおうというのが、第1段階の内容です。

上が通関説(現行解釈)、下が陸揚説(弁理士会が提案する解釈)

ただし、これにもいろいろと抜け穴があるかもしれません。発送業者側も、個人的に発送しているように装うなどの対策をしてくることが予想されます。そこで、将来的には、商標法の間接侵害の規定を改正して、模倣品であれば個人輸入であっても商標権侵害とする規定を入れてしまおうというのが、第2段階です。

ただこれは、産業財産権法が「業として」の要件を入れている意義にある意味反するものなので、いくつかの考慮をしています。例えば、対象を、「模倣品」に限定してます。ここで「模倣品」とは、デッドコピーのようなものに限定したものを想定しています(オリジナルを知って真似した点、及び「類似」まで広くない点にご注意ください)。また、刑事罰の対象から除外しています。

こうすることで、いま問題になっている偽物の個人輸入の大半は止められるようになるだろうと考えています。まだまだ課題はありますが、関係者の皆さんが努力を続けていらっしゃるので、実現できると信じたいと思います。

注:「個人輸入です」と嘘の意見書を出して偽物を輸入して、転売する行為は、違法ですし、犯罪です。絶対にやめましょう。

知財業界での初体験 – 弁理士の日記念ブログ企画2019

ということで今年もやってきました、弁理士の日。そう、本日7月1日は弁理士の日です。たぶん弁理士制度が始まった日です。

毎年この日に、「独学の弁理士講座」の内田先生がブログイベントを企画してくださっています。前ブログから引き続き、今年で5年くらい続けての参加となります。

今年のテーマは「知財業界での初体験」ということで、何を書こうかこのところずっと考えていたのですが、弁理士になって10年以上経ち、当初のことはほとんど覚えていません。

おそらく最初は中間処理などをしていたはずなのですが、当然自分が出願した案件ではないですし、記憶にありません。初めての特許出願、初めての翻訳、初めての拒絶査定、初めての審判請求、初めての特許庁への電話、初めての外国代理人の営業対応・・・ダメです、何ひとつ覚えていません笑

手続的なことは何も思い出せないので、初めて中国・義烏に行ったときの話を書こうと思います。

私は数年前に、中国浙江省の義烏という街に駐在していたことがあります。そのあたりはこの記事などで紹介しているのでご興味ある方はお目通しください。

駐在といっても、ある日思い立って「中国に出張所を作って国際化だぜイヤッホー!」と縁もゆかりもない土地にスーツケースひとつでフラッといきなり移住しただけなのですが、もちろん引っ越す前には出張ベースで何度か行っていました。

義烏には、世界最大の卸売市場、通称「福田市場」があります。とにかく巨大な市場で、雑貨・日用品ならば見つからないものはまずありません。

福田市場の2区。1〜5区からなります。

初めて福田市場を訪れたときのことは、いまでもよく覚えています。上海でちょっとした用事があり、そのついでに義烏にも寄ったのですが、それまで中国には広州など南方にしか行ったことがなく、初めての上海、そして義烏だったので、トラブル続きでした。

ネット情報では「上海南駅」から特急で行くと書いてあったのですが、前日の食事で一緒だった中国人から「いまは上海虹橋駅から新幹線が出てるよ」と聞き急遽ルート変更。たまたま泊まっていたホテルが虹橋駅に近かったのはよかったのですが、駅で英語がまったく通じない。外国で列車のチケットを買うのに困るという初体験をしました。

帰りはもっと大変だったのですが、知財と関係ない話はtogetterにまとめたのでそちらをご覧ください。

さて福田市場に行ってみて、小さいブースが無数に並び本当に何でも売っている様子を目の当たりにして、心底圧倒されたのをよく覚えています。当時の写真ではありませんが、こんな感じです。

2日半かけて端から端まで見て歩きました。完全に足が棒でした。

訪問前から、「何か買って帰国後にヤフオクで売れば旅費くらいでるよ!」と聞いていたので、探しながら歩いていたのですが、とにかくあらゆる商品が売っているので、何を買っていいのかわかりません。

そんな中、たまたま目についた商品がありました。キャラクターものでした。

写真が残っていないので、同種の商品を探してきました。これです。

出典: THE MARY SUE

おわかりの方も多いと思います。Angry Birds のUSBメモリです。

Angry Birds は世界的に人気のスマホゲームで、上記商品はそのキャラクターを用いたものです。値段やロット、詰め合わせの条件などを交渉して、よさそうなので買おうということになり、最後にいろいろ雑談をしていると、出身地の話題になりました。

「ん?日本だけど」「えっ、日本?!ダメダメ、これは売れないよ!」

「なんでだよ!まさかこれ・・・コピー・・・?!」「日本では売っちゃダメだよ(てへ」

そう、ただの偽物だったのです。

この店は同様にキャラクターもののUSBメモリをたくさん売っていました。まさか「ザ・偽物」をこんなに堂々と売っているとは、当時の私は思いもしませんでした。世間知らずだった私は、偽物は悪いやつらがコソコソ裏ルートで取引していると思っていたのですが、日本を少し離れた世界の現実を目の当たりにして、大きな衝撃を受けました。

この体験が、私を模倣品対策の道に進ませました。Angry Birds は外国企業のキャラクターですが、ジブリやワンピースなど、日本のキャラクターの商品もたくさんありました。いま振り返れば、ほぼすべてコピー品だったのでしょう。

こうした商品がこんなに堂々と売られる世界はなんとかしないといけない。そう思って義烏に行って模倣品対策を本格的に始めました。

これが私の「知財業界での初体験」です。

その後いろいろと勉強する機会があり、偽物にもいろいろな種類があって、対策もそれぞれ異なることを知りました。これらの話はまたいずれ。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています

アマゾン・トランスペアレンシーってなに?

アマゾントランスペアレンシーというプログラムがあります。

アマゾンブランドレジストリー(アマゾンのブランド保護施策)の一環()で提供されているプログラムで、現段階では米国のみで展開されています。

ざっくり紹介すると、アマゾンが発行するQRコードを商品パッケージに貼っておくと、FBA納品時にアマゾンが真正品であることを確認してくれるというものです。

コードが偽造されている場合など、真正品と確認できないときは、偽物と推定されて、アマゾンの模倣品排除プログラムに従って処理されます。

コードは商品単位(※型番単位ではなく、個々の商品ごとにユニークな文字列)で与えらます。なので、ある商品を購入してみて、そのコードをコピーしてももう遅いというわけです。

アマゾンから発行されたコードが商品に貼られていると、アマゾンは正しいコードが貼られた商品のみを真正品として扱うので、少なくともFBA経由では模倣品が販売されなくなることになります。

これまでアマゾンには、権利者から、フルフィルメントセンター(倉庫)に納品された商品の真贋判定をしろ(つまり「あんたの倉庫に偽物が入っているんだから人間の目でチェックしてこい」)というプレッシャーがかけられていましたが、納品された商品が本物か偽物かをアマゾンが判断することは現実には難しく、厳しい対応を迫られていました。トランスペアレンシーはそれを解決する手段といえます。

さらにトランスペアレンシーは、アマゾン外の店舗で販売される商品でも利用できます。例えばスーパーで売られている商品のQRをスマホアプリで読み取ることで、購入者はその商品が本物かどうかチェックすることができます。

つまりアマゾンは、FBA納品時には自らコードをスキャンして本物かチェックしますし、そのシステムを外部にも提供してどこでも誰でも真贋チェックができるようにしているのです。

なおオマケの機能として、メーカーは、製造日や製造地、その他パッケージに書ききれない情報をコードに持たせることができます(ユーザーはスマホ画面で確認できます)。

例えばロットごとに細かい情報が変わる商品ならば、都度パッケージを作り直さなくても、トランスペアレンシーで顧客に情報開示できるかもしれません。

というなかなか便利なプログラムなので、昨年米アマゾンの法務担当者と話をしたときに早く日本にも導入しろと言ったところ、2019年度に導入予定という回答がありました。そろそろ半分が終わりますが、さて間に合うでしょうか。

なお、これまで米国でも、パワーブランドというか模倣品対策においてアマゾンと協力関係の強いところから順にトランスペアレンシーに参加できましたが、いまは広く受け付けているようです。クライアントに紹介しろと連絡がきたので、ブログ記事にしてみました。米アマゾンで販売されているメーカーさんは参加を検討されてみたらいかがでしょうか。

(※)アマゾンブランド登録は、複数のプログラムからなります。ブランド登録は日本でも提供されていますが、いまのところ Notice and Takedown にのみ対応しています。今後他のプログラムも順次追加されるものと思われます。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています

アマゾンの模倣品対策 – Part 2 – 手軽さの裏側

アマゾン模倣品対策シリーズです(Part1はこちら)。

前回は、カタログ方式に起因して、正規品の商品ページに模倣品が紛れ込むメカニズムを紹介しました。

今回は、そもそもなぜアマゾンに模倣品を出品する人が多いのかについてみていきます。

前回も紹介した以下の記事

Amazon、偽ブランド品を推奨 AIが見過ごす(日経新聞)

ではまさにこの点が検証されています。

模倣品を販売するかにかかわらず、ECモールに出品するには、まず出店登録(アカウント登録)をする必要があります。

アマゾンではこの出店登録の際の本人確認が甘く、偽物を売るような質の低い出品者が登録しやすいと言われています。

約2年前まで、アマゾンの出品登録時に要求されていたのは、以下の情報です。

  1. 氏名
  2. 住所
  3. 電話番号
  4. メールアドレス
  5. クレジットカード番号
  6. 銀行口座

これらの情報の多くは登録時に確認されなかったので、虚偽の情報で出品者登録ができてしまうという問題がありました。

例えば、氏名や住所は、いくらでも嘘の情報が書けます。

電話番号は、自動応答電話で確認コードが送られてくるのですが、携帯電話番号はSIMカードを変えればいくつでも持てますので、事実上本人確認機能を果たしません(匿名のSIMカードを入手する方法はブログでは書けません…)。

メールアドレスは、フリーアドレスが簡単に取得できます。

クレジットカードも、プリペイド式のカードがコンビニで簡単に買えます。

そしてなんと、銀行口座も他人から買うことができます。詳細は書けませんが、「ヤバイことに使う口座」というの市場に出ていて、相場があり〇〇円程度で買えるのです。

いずれにせよ、アマゾンは出品アカウント登録時の本人確認がかなり雑で、誰でも簡単に登録できてしまうという問題があります。

約2年前に、中国人による出品アカウント乗っ取りが問題となり、アマゾンでも出品時に身分証明書の提示が要求されるようになりました。

これによりアカウント作成のハードルが上がることが期待されたのですが、この運用は必ずしも前出品者に適用されるわけではありません。ランダムなのか、独自の基準で選定しているのかわかりませんが、身分証明書の提出は一部の出品者にしか要求されないと言われています。実際、上記日経記者にもこの要求はなかったようです。

その結果、偽物を売る人や、偽物でないことを確認しない人でも簡単にアマゾンで販売できるようになり、結果アマゾンで偽物がたくさん販売される事態に至っています。

例えば楽天市場では、日経記者が実験したとおり、出店時の本人確認をかなりしっかりとやっています。特に個人は、信用情報まで含めてかなり厳しく審査され、質の良い出品者のみが集まるモールにしたいという意志をを強く感じます。さすが上場企業という印象です。

一方でアマゾンは、まずは広く出品者を募り、その後問題のあるアカウントを排除しようという方針が感じ取れます。まさに米国的なプラグマティズムです。

多くの日本企業は、日本人の誰もが知っている有名企業がこんなに雑にサービスを提供するなんて信じられないと思っていますが、まずは出品者に広く門戸を開き、問題のあるユーザーを事後的に排除するのが最も費用対効果がよいというプラグマティズムに基づいた価値観を理解する必要があります。

もちろん、アマゾンも「アマゾンブランド」を重視していて、「アマゾンは偽物がたくさん売られるマーケットプレイス」というイメージがついてしまうことを決して望んではいないのです。

当所も業務でアマゾンの中の人とやり取りする機会は多くありますが、これまでに「偽物を売ってでも手数料を稼ぎたい」と思っていると感じたことは一度もありません。アマゾンも、偽物や偽物販売者はすべて排除したいと常に思っています。

ただ、アマゾンのシステムは米国から輸入されたものであり、日本独自の対応がほとんどできないというジレンマがあります。アマゾンのシステムは米国でも批判を浴びていますが、法制度や文化慣習の差から、日本ではより大きな問題を生じているように思います。

いまや日本のアマゾンは日本企業(アマゾンジャパン合同会社)なわけですから、日本の商慣習により適するよう変わっていくことが望まれます。

ところでアマゾンでは、ユーザーの識別にIPアドレスを利用していると言われています。そのため、シェアオフィスのように複数の事業者が1つのIPアドレスを共有する場合、ある事業者が規約違反でペナルティを受けると、同一オフィスの全事業者が同時に出品停止になったりします。これも、広く出品者を募り、その後問題のあるユーザーを合理的に排除しようというアマゾンのドグマを象徴する事例のひとつのように思います。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています

ぶっちゃけオンライン商標登録サービスってどうなの?

こんなテーマでブログを書くと怒られそうですが、以前から思うことがあるので、週末にこっそり書きます。

「オンライン商標登録サービス」・・・という呼び方が正しいのかわかりませんが、要は商標調査や出願依頼をオンラインで完結できるサービスがあります。この部分の説明は省略するので、以下の記事をお読みください。

TORERU、COTOBOX、NOMYNE。 今話題のオンライン商標登録サービスを徹底比較(BRAND TODAY)

2年前くらいからメディアに取り上げられる機会が増え、知名度が上がったように思います(そもそもサービス開始がその頃のはずです)。

これらのサービスを使えば、オンラインで商標調査ができ、そのまま依頼ができます。多くの特許事務所は、ウェブサイトのメールや問合せフォームから相談を受け、その後弁理士とやり取りをしながら手続きを進めます(当所もそうです)。

一方でオンライン商標登録サービスでは、ウェブ上で自分で調査できるので、結果がその場でわかることに加えて、「一度弁理士に相談してしまうと、その後出願をやめるとか他の特許事務所に依頼するとか言い出しづらくなる」という心理的ハードルをクリアできることに需要があるのだと思います。

そしてなにより、作業を自動化することで、手数料を大幅に下げることに成功しています。

結論から言いますと、私はオンライン商標登録サービスは素晴らしいと思います。これまで弁理士が手作業でこなしていた作業をコンピュータにやらせることで、手数料を下げられる。明らかに時代の流れに順行していますよね。

逆にいうと、コンピュータで自動化できることをわざわざ手作業して手数料を稼ぐ従来の弁理士のビジネスモデルは、もはや完全に崩れているということです。そんなことは機械にやらせて手数料を稼がせるモデルの方が優れていることは明らかです。

私がこう考える理由はもうひとつあります。今後、特許庁における審査は、どんどんAIが行うようになります。それが高い精度でできるようになると、逆説的ですが、審査を行わなくてもよくなるようになります。世界では、商標を無審査で登録するのが趨勢です。今後日本もその流れに巻き込まれ、無審査制度を採用する可能性が高いと考えています。(※わかりづらいと思うので、これは別の機会に記事にします。)

そうなると、審査に通るための調査や出願という作業の価値は下がっていきます。いずれにせよこの部分の自動化・低コス化は必然なのです。

ただ現段階で本当にすべての商標出願がオンライン商標出願サービスでできるかというと、そんなことはないと思うんですよね。

オンライン出願サービスでは、文字商標の先行商標調査がウェブ上で手軽にできます。ただこの調査は、弁理士に依頼しても一瞬でできることがほとんどです。弊所では無料で対応していますし、そもそも依頼のハードル自体が低いです。

例えば私は弁理士会等の無料相談を多数担当していますが、多くの相談者が出願予定の商標を持参されます。先行商標の有無をその場で調査しますが、ほとんどのケースで、十秒程度で結論が出せます。

たまに類似度が微妙な先行商標が見つかり、判断が難しいこともありますが、そのような微妙な判断はどうせオンライン商標出願サービスでもできません。

「AIを用いて類否判断をしている」という宣伝文句が独り歩きしていますが、称呼から類似度順に類似商標をリスト化するシステムなど大昔から特許庁の無料DBでできますし、この部分の技術は正直大したことはありません。少なくとも商標の調査で「AIが云々」というのはただの広告です。

結局のところ、先行商標調査という観点からは、オンライン商標出願サービスは、J-PlatPatを素人向けに少し使いやすくしたという程度でしかありません。

商標出願を扱う弁理士の感覚として、先行商標調査は、全作業中、5%程度の重量しかありません。まれに類否判断が難しいケースは大変ですが、上述のとおりこれはオンライン商標出願サービスでも弁理士が行っています(プログラムが判断できるのは「類似度が高い商標登録がある」という部分までです)。

実は出願準備作業で最もウェイトが大きいのは、指定商品・役務の決定です。これには専門知識と経験が必要です。

オンライン商標出願サービスでは、キーワードから関連する商品リストを表示し、ユーザーはその中から指定する商品を選択するようです。

それでもよいのですが、指定商品は商標権の効力範囲そのものですから、これを適切に選択することは非常に重要です。当所の商標出願手数料の根拠の大部分は、専門的観点から適切な指定商品を選択することにあると考えています。

例えば、アパレル関連商品を広くカバーする「被服」という概念があります。アパレル全般をざっくり押さえようと思ったら、オンライン商標出願サービスでは、おそらく「服」などのキーワードで検索して、広い概念である「被服」がリストに出てくるので、それを指定するのだと思います。

しかし、その商標を将来外国にも出願しようとしたとき、例えば中国では「被服」はかなり狭い範囲しかカバーされないので、適切に権利保護できないことになります。そもそも日本でも、どこまでが「被服」に含まれるかをきちんと調べないと、実は希望する権利が取得できない事態を招きかねません。

結局のところ、オンライン商標出願サービスは、「J-PlatPatよりも初心者に優しい独自のデータベースを提供するサービス」ということができます。ですので、

  1. 類似商標が見つからないケースで、
  2. 指定商品が明確にわかる場合、

には、1万円程度の手数料で商標出願を外注できるので、積極的に利用されるとよいと思います。

逆に少しでも微妙な部分があるケース、特に指定商品の選定に不安があるとか、将来外国にも出願するかもしれないケースでは、最初から弁理士に依頼したほうが安全です。

実際、オンライン商標出願サービスで出願した案件に拒絶理由通知が発せられ、中間処理から受任するケースがありますが、出願自体に問題があるケースも多くあります。本来であればここを整えてから出願するのが弁理士の仕事なのですが、コストと一緒にこの作業を削っているわけです。

この部分を省略できるか判断できない場合は、数万円余計にかかるかもしれませんが、弁理士に相談しながら出願準備を進めることをお勧めします。そうでないと、中間処理に出願以上の費用がかかることになります。

もちろんオンライン商標出願サービスも今後いろいろとアップデートされるでしょうから、弁理士の業務から商標出願の代理がなくなる未来は近いと思います。

実際当所では、上記2つの要件を満たす、ある意味特許事務所にとって楽で「オイシイ」商標出願は、既に業務から消えたと考えています。商標出願では、弁理士の判断を仰がなければ進められない案件、外国出願の可能性を含む案件にターゲットを絞っています。

繰り返しますが、テクノロジーを用いて手作業の手数料を省略する流れは当然ですし、素晴らしいことだと思います。いまはまだ十分に自動化できるほど技術が発達していないということだと思います。

一部の弁理士は、「商標出願を1万円で受任するなんてけしからん!そんなことをすると他の弁理士が食っていけなくなる!」と公式・非公式に対応しようと考えているようですが、完全に時代に逆行していますよね。

かつて、弁護士には「松・竹・梅」のランク分けがあり、「松」は受任料1千万円スタートだったと聞いたことがあります。これが本当かは知りませんが、少なくとも弁護士の受任料は案件ごとに異なるのが一般的です。しかし、商標出願には手間や難易度の差があるにもかかわらず、現在の料金体系では、すべての案件の弁理士手数料は一律です。オンライン商標出願サービスなど、様々な形のサービスが登場することで、出願人に費用面での選択肢が生じることは歓迎すべきことだと思います。

※オンライン商標出願サービスでは、識別力等(商3条関係)は検討すらされないようです。明らかに識別力を欠くケースを中間から受任することがありますが、そもそも商標の選択を間違えている(誰にも登録できないのだから先行商標が存在しない)わけですから、いくら安くても出願自体が無駄だったということになります。このあたりも、現段階では弁理士に相談したほうがよいという理由付けになりそうです。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています

ブランディングってなんだろう? – 連続研究1 – セントラルキッチン編

弁理士の基軸業務のひとつに、商標登録があります。商標登録ってなぜ必要なんでしょうか?

その商標を独占的に使用するため、安心して使用するため、他人の商標登録を阻止するため、模倣品を排除するため・・・。様々な理由がありますが、突き詰めれば「ブランディング」のためといえます。

では「ブランディング」って何なんでしょう?ビジネスの現場では日常的に用いられますし、最近では「セルフブランディング」などの新しい使い方もされるようになりましたが、その本質を一言で言い表すのはとても難しいです。

そこで、本ブログで、少しずつブランディングの勉強をしていきたいと思います。私が勉強するという意味ですよ笑。

少なくとも現段階で、「ブランディングとは○○である」といえる答えを、私は持っていません。そこで、ブランディングに成功・失敗した身近な実例や、本や論文で学んだことを、ブログに綴っていこうと思います。答えがあってそれを分解して説明するのではなく、気付いたこと・知ったことをアーカイブ化していき、いずれ帰納的に何らかの結論が出せればいいなという軽い企画です。

ということで第1回目は、ブランディングとセントラルキッチンをテーマに考えてみます。

例えば、ラーメン屋を開業したとします。毎日スープの仕込みは大変ですが、味やサービスが評判を呼び、継続的に利益が出るようになりました。そこで、近くに2号店を出店します。

順調に2号店、3号店・・・と店舗を増やしていき、売上も増えました。単純に売上は2倍、3倍・・・となると仮定しましょう。

もちろんそのぶん経費も増加しますが、仕入れや決済手段、従業員管理などは一元化できるので、2倍、3倍・・・とはなりません。例えば材料の仕入れは、複数店舗あっても1度で済みますし、注文量が増えれば単価も下げられます。現金以外の決済手段の基本料金は店舗数にかかわらず一定なので、店舗数に応じて均していくことができます。

つまり、店舗数が増えるほど利益率は高くなる傾向にあるといえます。

こうして順調に店舗数を増やして経営を合理化し、収支が安定してきました。そろそろフランチャイズ化して、自動的に収益が上がるようにしようと考えます。しかし、各店舗でスープの味を統一するのは難しく、またフランチャイジーにとっては仕込みの負担が大きく、事業拡大のネックになっています。

そこで、セントラルキッチンを導入することにします。セントラルキッチンとは、外部の施設で大量に調理をして各店舗に配送するシステムで、店舗は温めなどの簡単な調理のみで料理を提供できるようになります。もちろん品質の維持(美味しいスープを大量に作れるか)などの課題はありますが、これらをクリアして、大幅に経費を削減しつつ店舗数を増やすことに成功しました。

これをブランディングの観点から見たときのポイントはどこでしょうか。店舗数を増やしていき、フランチャイズ展開をするときに、開店前から売上が見込めるということではないでしょうか。

なぜ開店前から売上が見込めるのでしょうか。他の地域で成功した経験から新しい店舗でも成功すると予測できる、という側面ももちろんあるでしょう。しかしそれよりも、ラーメンの評価が定着したことによって、そのラーメンのブランドが顧客を吸引する力を得たからといえるように思います。

「最近話題の博多一風堂が近所にオープンするんだって、行ってみよう!」となる。食べる前なのに一定の評価が得られた状態からスタートできるわけです。無名の状態で出店することと比べて、リスクが大幅に異なることは明らかです。

このように、ブランド自体に顧客吸引力が備わり、事前に売上予測が立てられるようになれば、セントラルキッチンによるスケールメリットを享受することができます。

1店舗→多店舗→フランチャイズと、規模が大きくなるにつれてスケールメリットも大きくなるわけですが、その根幹には「ブランド」があることを忘れてはいけません。

ブランディングの性質のひとつに、「ブランドそのものが価値を持つ」ことが挙げられそうですね。

今回は、博多一風堂、一蘭、味千ラーメン、その他フードコートに入っている様々な種類の飲食ブランドの事例からブランディングを考えてみました(なおこれらがセントラルキッチンを利用しているかは確認していません)。

今日のテーマからは、他にも、例えば暖簾分けやフランチャイズ化自体のブランディングの問題、多店舗展開とブランドの強さの相関関係など、面白い検討がたくさんできそうです。次回以降考えてみたいと思います。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています

いまさらですが印紙代がクレジットカードで納付できるようになった件について(弁理士向け)

表題どおり、印紙代がクレジットカードで納付できるようになりました。

クレジットカードによる納付(指定立替納付)

印紙代を立替納付している事務所では、キャッシュフローの改善を期待されたのではないかと思いますが、個人事業主の限度額の壁に当たっている弁理士も多そうです。

業務法人化していれば限度額が大きい法人カードが作れるのかもしれませんが、そもそも法人カードは審査基準が厳しいこともあって、活用が難しいと考える弁理士も多いのではないでしょうか。

たしかに、キャッシュフローという観点からはクレカ納付はあまり役に立たないかもしれませんが、実はこれのもう一つの利点は、カードのポイントだと思います。

仮に1%のポイントがつくとすると、20万円の審査請求料の納付で2000円分のポイントがもらえます。年間50件の審査請求をすれば、それだけで10万円のポイントが貯まることになります。

実際、かねてよりクレカ納付ができた米国では、海外出張をクレカポイントでしている代理人がたくさんいます。印紙代は何らかの方法でどうせ払わなければいけないわけですから、クレカを利用しない手はないはずです。

だから限度額が!・・・というツッコミが聞こえてきますが、そこでお勧めしたいのがデビットカードです。

ご存知のとおり、デビットカードはクレジットカードと同じように買い物等ができ、ただし信用取引ではなくその場で銀行口座から支払いが行われるものです。クレジットカードのような支払いサイトの延長は望めませんが、クレカと同様にポイントがつきます。そして多くのデビットカードには、限度額がありません

弊所では、楽天銀行のデビットカードを使っています(限度額なし)。JCBを選べば1%相当額が楽天スーパーポイントで還元されます(なおそのポイントは更にデビットカードで1ポイント1円に変換して支払いに使用することができます)。

楽天銀行デビットカードを作るには、楽天銀行の口座が必要です。楽天銀行はネット銀行ですので、窓口に行かずオンラインで口座開設できます。

楽天銀行ならば、振込手数料が165円(3万円以下のとき)と安いですし、海外送金手数料は1000円です。チマい話かもしれませんが、チリツモですよね!

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カナダ現行商標法の手続きはあと16日

ということで、ようやくカナダの改正商標法施行日が近づいてきました。

施行日は6月17日ですが、13〜16日は知財庁のシステムアップデートのため出願できないので、現行法の下に出願できるのはあと16日間ということになります。

カナダといえば世界でも珍しいというか、悪評高い商標制度をずっと続けてきたのですが、ようやく大幅改正に至りました。

今回の改正の目玉は、やはりニース分類の採用でしょう。これまでカナダは、ニース分類を採用せず、区分制度すらありませんでした。区分という概念がないため、どれだけ広範に商品・役務を指定しても同一料金だったのですが、今後は区分ごとに費用が発生します。

現行法下の印紙代
出願料 : CAD 250
登録料 : CAD 200
合計  : CAD 450(固定)

新法下の印紙代
出願料 : [1区分目]CAD 330
      [2区分目]CAD 100
登録料 : —
合計 : CAD 230 + 100N(N:区分数)

新法では、登録料が廃止されます(出願料に含まれます)。

このように、2区分以下なら新法の方が印紙代は安いのですが、注意すべきは代理人手数料も区分数に応じて増加することから、実際は複数区分の出願は新法ではすべて値上がりすることになります。

そこで現地代理人から複数区分の出願をするならいまがチャンスだよ!という営業メールがきたのでこの記事を書いているわけです笑

ただし、ニース分類を採用したことで、ついにカナダもマドプロに加盟することになりました。マドプロルートでカナダを指定するときの個別手数料は、1区分目がCHF251(約CAD335)、2区分目がCHF76(約CAD100)ですので、国内出願とほぼ同額です。

つまりまとめると、以下のようになります。

結論
区分数にかかわらず、新法化でマドプロ利用するのが安い(この世の真理)。
直接出願する場合は、複数区分の出願はいまのうちにしておくのが安い。1区分ならば新法の方が安い。

今回はいわゆる大改正で、他にも重要な変更がいくつかあるのですが、残り16日間のうちに出願するかどうかの判断に影響するのは、上記ニース分類採用による費用変更の点のみです。

その他の変更点で特に興味深いものは、例えば「出願ベース」の廃止があります。

現行カナダ法には「出願ベース」という概念があります。これは、出願が「使用ベース」、「使用予定ベース」、「本国出願・登録及び外国使用ベース」のいずれかに基づかないといけないというもので、使用開始日や外国出願の情報などを要求するというものです。

今回の改正で、出願ベースが廃止されます。これにより、出願時に必要な情報が減り、より出願しやすくなります。また同時に、使用宣言書の要求もなくなります。

また、新たに分割出願制度が導入されます。日本では馴染み深い制度ですが、カナダ法はユニークで、親出願・子出願のいずれもが登録された場合は、最終的にそれらが統合されます。これによって、更新手続きはひとつの登録についてのみ行えばいいことになります。

他にも、存続期間が15年間から10年間に短縮されたり、味やにおいなど非伝統的な商標も保護されるようになったりという改正もあります。

これまで使いづらい制度のせいでカナダ出願を後回しにしていた企業は、この機会に出願を検討してもいいかもしれません。

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ミャンマー知財法成立

ミャンマーで知財法が成立したとの報道がありました。

ミャンマーで知財法が成立、模倣対策に寄与(NNA ASIA)

ご存知の方も多いと思いますが、ミャンマーにはこれまで(著作権法以外の)知的財産法がありませんでした。ですので、特許や商標の出願を審査して登録するということはできませんでした。

そもそも法律がないのですから、出願自体ができません。特許庁もありませんでした。

そこでこれまでは、「登記法」に基づいて、外国で登録された特許・意匠・商標の所有権を登録していました。しかし権利行使をするには、新聞等でその内容を広告(「公告」ではなく、権利者自らによる「広告」)することが必要でした。

物価の差(月給1万円以下だそうです)もあり、所有権の登録までは比較的安くできたのですが、新聞広告にはやはりそれなりの費用がかかり、ミャンマー出願のネックになっていました。

新聞広告の費用は、広告欄のサイズ、例えば商標出願ならば指定商品の数などにより変動しますが、最低1,000ドル、通常は2,000ドル以上かかります。

今回知財法が成立したことにより、大枠では世界基準の知財制度が整備されたことになります。しかし、まだ法律ができたというだけで、おそらく特許庁もありませんし、審査官の教育もこれからです。出願の受付開始までにはまだ時間がかかると思われます。

日本企業として気になるのは、これまでに登記法に基づいて登録した商標等の、新法下での有効性だと思います。まだ詳細はわからないのですが、弊所が現地代理人から入手している情報(※新法成立前ですので正確ではない可能性があります)では、所有権登録済みの権利は、新法施行後も有効であろうとのことです。

ただし、新法に基づいてミャンマー国内で発生した特許権や商標権のほうが当然強いでしょうし、現行の所有権登録は3〜5年おきに広告し直すことが推奨されていることを考えると、新法に基づいて出願・権利化することが好ましいと思われます。

なお、現行の登録と新法による登録は、併存できる見込みとのことです。また、先願主義が採用される関係で、出願受付開始時には、一定期間(おそらく数ヶ月間)の猶予期間を設け、その間での先後願は判断しないこととなるようです。その際、出願内容がバッティングした場合は、所有権登録してあるものを優先することになると思われます。

逆にいうと、この猶予期間に出願しないと、新法下で登録できない可能性があります。受付開始時にスムースに出願できるよう準備を進めておく必要があります。

いざ出願受付が開始されると、現地代理人のキャパには限界があるので、かなりの混乱が予測されます。日本企業はいまから出願準備を進めておいたほうがいいでしょう。

特に委任状は、(公証及び領事館認証は不要の見込みですが、)いまの段階で現地に送っておき、いつでもすぐに出願できる体制を整えておくと安心です。弊所の雛形も用意していますので、お気軽にお尋ねください。

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アマゾンの模倣品対策 – Part 1 – カタログ方式の罠

相変わらずアマゾンでの模倣品対策のご相談を継続的に受けます。

一部は未だに相乗り排除に関するものもありますが、最近は模倣品対策に関連するものがほとんどを占めるようになりました。

メーカー担当者の間では、アマゾンでの模倣品対策は難しいという事実は広く知られるようになってきました。例えば以下に面白い記事があります。

Amazon、偽ブランド品を推奨 AIが見過ごす (日経新聞)

そもそも日本で偽ブランド品が売られているのか?と思われるかもしれませんが、実はたくさんあります。偽ブランド品にもいろいろな種類がある(例えばパロディ商品を含むのかなどの議論があります)のですが、わかりやすい「ザ・ニセモノ」も、ECを中心にたくさん売られているんです。

ECショッピングモールは集客力が大きいので、本物の商品に紛れさせて偽物を売る輩が跡を絶ちません。その中でも特に対策が難しいのは、アマゾンです。理由はいろいろあるのですが、やはりカタログ方式という特殊なサイト構成が最大の原因です。

カタログ方式とは、「同じ商品は同じ商品ページで売る」という方式です。例えば出店型の楽天市場では、同じ商品であっても、出品者がそれぞれ商品ページを作ります。つまり同じ商品に対して、複数の商品ページが並列的に存在することになります。

一方でカタログ方式を採用するアマゾンでは、同じ商品に対して作成される商品ページは、1つのみです。一番最初にその商品を販売する人が商品ページを作成し、二番目以降に出品する人は、既存の商品ページに出品をします。その商品の販売ページが存在するのに、新しく商品ページを作成することは規約違反です。

アマゾンの考えは、同じ型番の商品は誰が売っても中身は同じなんだから、商品ページは1つにまとめた方がシンプルだ、というものです。これは実際そのとおりだと私もユーザーの立場では思うのですが、本物の商品ページに偽物を紛れさせて売ることが可能なので、模倣品対策が非常に難しくなってしまいます

なにせ、商品ページ自体は本物なのです。商品画像も、タイトルや説明文のブランド名もすべて本物なのですから、商品ページの情報からその商品が偽物であることを見破るのは、技術的に不可能です。

さらにいえば、試買(本物か確かめるために実際に商品を買ってみる)をしてみて、届いた商品が偽物だったとしても、それが「混合在庫」であった場合は、その商品を誰が販売したか、購入者にはわかりません。(これは多少複雑なので別の機会に記事にします。)

カタログ方式を採用するECモールは、日本の大手ではアマゾンのみです。楽天市場、Yahoo!ショッピング、Wowma、ヤフオク、メルカリ、Qoo10、いずれも出店型ですので、モール内で仮想店舗を開店するイメージです。同じ型番の商品であっても、各店舗が「売り方」「見せ方」に独自性を出してそれぞれ商品ページを作成しなさい、という仕組みになっています。

これはユーザーとしては不便に感じることもあるのですが、模倣品対策という観点からはありがたい制度です。なぜならば、偽物を売る人が、偽物の商品の販売ページを作成するわけですから、画像や文章などの情報に不自然な点が見られることが多く、サイト上のみで商品が偽物であることを判断しやすいからです。

このような事情で、そもそもアマゾンは他のモールと比較して模倣品を発見しづらいのですが、アマゾンでの模倣品対策が難しい理由は、他にもあります。上記日経の記事ではその点にも触れているので、次回以降詳しく解説していくことにします。

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