月別: 2019年5月

いまさらですが印紙代がクレジットカードで納付できるようになった件について(弁理士向け)

表題どおり、印紙代がクレジットカードで納付できるようになりました。

クレジットカードによる納付(指定立替納付)

印紙代を立替納付している事務所では、キャッシュフローの改善を期待されたのではないかと思いますが、個人事業主の限度額の壁に当たっている弁理士も多そうです。

業務法人化していれば限度額が大きい法人カードが作れるのかもしれませんが、そもそも法人カードは審査基準が厳しいこともあって、活用が難しいと考える弁理士も多いのではないでしょうか。

たしかに、キャッシュフローという観点からはクレカ納付はあまり役に立たないかもしれませんが、実はこれのもう一つの利点は、カードのポイントだと思います。

仮に1%のポイントがつくとすると、20万円の審査請求料の納付で2000円分のポイントがもらえます。年間50件の審査請求をすれば、それだけで10万円のポイントが貯まることになります。

実際、かねてよりクレカ納付ができた米国では、海外出張をクレカポイントでしている代理人がたくさんいます。印紙代は何らかの方法でどうせ払わなければいけないわけですから、クレカを利用しない手はないはずです。

だから限度額が!・・・というツッコミが聞こえてきますが、そこでお勧めしたいのがデビットカードです。

ご存知のとおり、デビットカードはクレジットカードと同じように買い物等ができ、ただし信用取引ではなくその場で銀行口座から支払いが行われるものです。クレジットカードのような支払いサイトの延長は望めませんが、クレカと同様にポイントがつきます。そして多くのデビットカードには、限度額がありません

弊所では、楽天銀行のデビットカードを使っています(限度額なし)。JCBを選べば1%相当額が楽天スーパーポイントで還元されます(なおそのポイントは更にデビットカードで1ポイント1円に変換して支払いに使用することができます)。

楽天銀行デビットカードを作るには、楽天銀行の口座が必要です。楽天銀行はネット銀行ですので、窓口に行かずオンラインで口座開設できます。

楽天銀行ならば、振込手数料が165円(3万円以下のとき)と安いですし、海外送金手数料は1000円です。チマい話かもしれませんが、チリツモですよね!

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カナダ現行商標法の手続きはあと16日

ということで、ようやくカナダの改正商標法施行日が近づいてきました。

施行日は6月17日ですが、13〜16日は知財庁のシステムアップデートのため出願できないので、現行法の下に出願できるのはあと16日間ということになります。

カナダといえば世界でも珍しいというか、悪評高い商標制度をずっと続けてきたのですが、ようやく大幅改正に至りました。

今回の改正の目玉は、やはりニース分類の採用でしょう。これまでカナダは、ニース分類を採用せず、区分制度すらありませんでした。区分という概念がないため、どれだけ広範に商品・役務を指定しても同一料金だったのですが、今後は区分ごとに費用が発生します。

現行法下の印紙代
出願料 : CAD 250
登録料 : CAD 200
合計  : CAD 450(固定)

新法下の印紙代
出願料 : [1区分目]CAD 330
      [2区分目]CAD 100
登録料 : —
合計 : CAD 230 + 100N(N:区分数)

新法では、登録料が廃止されます(出願料に含まれます)。

このように、2区分以下なら新法の方が印紙代は安いのですが、注意すべきは代理人手数料も区分数に応じて増加することから、実際は複数区分の出願は新法ではすべて値上がりすることになります。

そこで現地代理人から複数区分の出願をするならいまがチャンスだよ!という営業メールがきたのでこの記事を書いているわけです笑

ただし、ニース分類を採用したことで、ついにカナダもマドプロに加盟することになりました。マドプロルートでカナダを指定するときの個別手数料は、1区分目がCHF251(約CAD335)、2区分目がCHF76(約CAD100)ですので、国内出願とほぼ同額です。

つまりまとめると、以下のようになります。

結論
区分数にかかわらず、新法化でマドプロ利用するのが安い(この世の真理)。
直接出願する場合は、複数区分の出願はいまのうちにしておくのが安い。1区分ならば新法の方が安い。

今回はいわゆる大改正で、他にも重要な変更がいくつかあるのですが、残り16日間のうちに出願するかどうかの判断に影響するのは、上記ニース分類採用による費用変更の点のみです。

その他の変更点で特に興味深いものは、例えば「出願ベース」の廃止があります。

現行カナダ法には「出願ベース」という概念があります。これは、出願が「使用ベース」、「使用予定ベース」、「本国出願・登録及び外国使用ベース」のいずれかに基づかないといけないというもので、使用開始日や外国出願の情報などを要求するというものです。

今回の改正で、出願ベースが廃止されます。これにより、出願時に必要な情報が減り、より出願しやすくなります。また同時に、使用宣言書の要求もなくなります。

また、新たに分割出願制度が導入されます。日本では馴染み深い制度ですが、カナダ法はユニークで、親出願・子出願のいずれもが登録された場合は、最終的にそれらが統合されます。これによって、更新手続きはひとつの登録についてのみ行えばいいことになります。

他にも、存続期間が15年間から10年間に短縮されたり、味やにおいなど非伝統的な商標も保護されるようになったりという改正もあります。

これまで使いづらい制度のせいでカナダ出願を後回しにしていた企業は、この機会に出願を検討してもいいかもしれません。

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ミャンマー知財法成立

ミャンマーで知財法が成立したとの報道がありました。

ミャンマーで知財法が成立、模倣対策に寄与(NNA ASIA)

ご存知の方も多いと思いますが、ミャンマーにはこれまで(著作権法以外の)知的財産法がありませんでした。ですので、特許や商標の出願を審査して登録するということはできませんでした。

そもそも法律がないのですから、出願自体ができません。特許庁もありませんでした。

そこでこれまでは、「登記法」に基づいて、外国で登録された特許・意匠・商標の所有権を登録していました。しかし権利行使をするには、新聞等でその内容を広告(「公告」ではなく、権利者自らによる「広告」)することが必要でした。

物価の差(月給1万円以下だそうです)もあり、所有権の登録までは比較的安くできたのですが、新聞広告にはやはりそれなりの費用がかかり、ミャンマー出願のネックになっていました。

新聞広告の費用は、広告欄のサイズ、例えば商標出願ならば指定商品の数などにより変動しますが、最低1,000ドル、通常は2,000ドル以上かかります。

今回知財法が成立したことにより、大枠では世界基準の知財制度が整備されたことになります。しかし、まだ法律ができたというだけで、おそらく特許庁もありませんし、審査官の教育もこれからです。出願の受付開始までにはまだ時間がかかると思われます。

日本企業として気になるのは、これまでに登記法に基づいて登録した商標等の、新法下での有効性だと思います。まだ詳細はわからないのですが、弊所が現地代理人から入手している情報(※新法成立前ですので正確ではない可能性があります)では、所有権登録済みの権利は、新法施行後も有効であろうとのことです。

ただし、新法に基づいてミャンマー国内で発生した特許権や商標権のほうが当然強いでしょうし、現行の所有権登録は3〜5年おきに広告し直すことが推奨されていることを考えると、新法に基づいて出願・権利化することが好ましいと思われます。

なお、現行の登録と新法による登録は、併存できる見込みとのことです。また、先願主義が採用される関係で、出願受付開始時には、一定期間(おそらく数ヶ月間)の猶予期間を設け、その間での先後願は判断しないこととなるようです。その際、出願内容がバッティングした場合は、所有権登録してあるものを優先することになると思われます。

逆にいうと、この猶予期間に出願しないと、新法下で登録できない可能性があります。受付開始時にスムースに出願できるよう準備を進めておく必要があります。

いざ出願受付が開始されると、現地代理人のキャパには限界があるので、かなりの混乱が予測されます。日本企業はいまから出願準備を進めておいたほうがいいでしょう。

特に委任状は、(公証及び領事館認証は不要の見込みですが、)いまの段階で現地に送っておき、いつでもすぐに出願できる体制を整えておくと安心です。弊所の雛形も用意していますので、お気軽にお尋ねください。

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アマゾンの模倣品対策 – Part 1 – カタログ方式の罠

相変わらずアマゾンでの模倣品対策のご相談を継続的に受けます。

一部は未だに相乗り排除に関するものもありますが、最近は模倣品対策に関連するものがほとんどを占めるようになりました。

メーカー担当者の間では、アマゾンでの模倣品対策は難しいという事実は広く知られるようになってきました。例えば以下に面白い記事があります。

Amazon、偽ブランド品を推奨 AIが見過ごす (日経新聞)

そもそも日本で偽ブランド品が売られているのか?と思われるかもしれませんが、実はたくさんあります。偽ブランド品にもいろいろな種類がある(例えばパロディ商品を含むのかなどの議論があります)のですが、わかりやすい「ザ・ニセモノ」も、ECを中心にたくさん売られているんです。

ECショッピングモールは集客力が大きいので、本物の商品に紛れさせて偽物を売る輩が跡を絶ちません。その中でも特に対策が難しいのは、アマゾンです。理由はいろいろあるのですが、やはりカタログ方式という特殊なサイト構成が最大の原因です。

カタログ方式とは、「同じ商品は同じ商品ページで売る」という方式です。例えば出店型の楽天市場では、同じ商品であっても、出品者がそれぞれ商品ページを作ります。つまり同じ商品に対して、複数の商品ページが並列的に存在することになります。

一方でカタログ方式を採用するアマゾンでは、同じ商品に対して作成される商品ページは、1つのみです。一番最初にその商品を販売する人が商品ページを作成し、二番目以降に出品する人は、既存の商品ページに出品をします。その商品の販売ページが存在するのに、新しく商品ページを作成することは規約違反です。

アマゾンの考えは、同じ型番の商品は誰が売っても中身は同じなんだから、商品ページは1つにまとめた方がシンプルだ、というものです。これは実際そのとおりだと私もユーザーの立場では思うのですが、本物の商品ページに偽物を紛れさせて売ることが可能なので、模倣品対策が非常に難しくなってしまいます

なにせ、商品ページ自体は本物なのです。商品画像も、タイトルや説明文のブランド名もすべて本物なのですから、商品ページの情報からその商品が偽物であることを見破るのは、技術的に不可能です。

さらにいえば、試買(本物か確かめるために実際に商品を買ってみる)をしてみて、届いた商品が偽物だったとしても、それが「混合在庫」であった場合は、その商品を誰が販売したか、購入者にはわかりません。(これは多少複雑なので別の機会に記事にします。)

カタログ方式を採用するECモールは、日本の大手ではアマゾンのみです。楽天市場、Yahoo!ショッピング、Wowma、ヤフオク、メルカリ、Qoo10、いずれも出店型ですので、モール内で仮想店舗を開店するイメージです。同じ型番の商品であっても、各店舗が「売り方」「見せ方」に独自性を出してそれぞれ商品ページを作成しなさい、という仕組みになっています。

これはユーザーとしては不便に感じることもあるのですが、模倣品対策という観点からはありがたい制度です。なぜならば、偽物を売る人が、偽物の商品の販売ページを作成するわけですから、画像や文章などの情報に不自然な点が見られることが多く、サイト上のみで商品が偽物であることを判断しやすいからです。

このような事情で、そもそもアマゾンは他のモールと比較して模倣品を発見しづらいのですが、アマゾンでの模倣品対策が難しい理由は、他にもあります。上記日経の記事ではその点にも触れているので、次回以降詳しく解説していくことにします。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています