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アマゾンの模倣品対策 – Part 2 – 手軽さの裏側

アマゾン模倣品対策シリーズです(Part1はこちら)。

前回は、カタログ方式に起因して、正規品の商品ページに模倣品が紛れ込むメカニズムを紹介しました。

今回は、そもそもなぜアマゾンに模倣品を出品する人が多いのかについてみていきます。

前回も紹介した以下の記事

Amazon、偽ブランド品を推奨 AIが見過ごす(日経新聞)

ではまさにこの点が検証されています。

模倣品を販売するかにかかわらず、ECモールに出品するには、まず出店登録(アカウント登録)をする必要があります。

アマゾンではこの出店登録の際の本人確認が甘く、偽物を売るような質の低い出品者が登録しやすいと言われています。

約2年前まで、アマゾンの出品登録時に要求されていたのは、以下の情報です。

  1. 氏名
  2. 住所
  3. 電話番号
  4. メールアドレス
  5. クレジットカード番号
  6. 銀行口座

これらの情報の多くは登録時に確認されなかったので、虚偽の情報で出品者登録ができてしまうという問題がありました。

例えば、氏名や住所は、いくらでも嘘の情報が書けます。

電話番号は、自動応答電話で確認コードが送られてくるのですが、携帯電話番号はSIMカードを変えればいくつでも持てますので、事実上本人確認機能を果たしません(匿名のSIMカードを入手する方法はブログでは書けません…)。

メールアドレスは、フリーアドレスが簡単に取得できます。

クレジットカードも、プリペイド式のカードがコンビニで簡単に買えます。

そしてなんと、銀行口座も他人から買うことができます。詳細は書けませんが、「ヤバイことに使う口座」というの市場に出ていて、相場があり〇〇円程度で買えるのです。

いずれにせよ、アマゾンは出品アカウント登録時の本人確認がかなり雑で、誰でも簡単に登録できてしまうという問題があります。

約2年前に、中国人による出品アカウント乗っ取りが問題となり、アマゾンでも出品時に身分証明書の提示が要求されるようになりました。

これによりアカウント作成のハードルが上がることが期待されたのですが、この運用は必ずしも前出品者に適用されるわけではありません。ランダムなのか、独自の基準で選定しているのかわかりませんが、身分証明書の提出は一部の出品者にしか要求されないと言われています。実際、上記日経記者にもこの要求はなかったようです。

その結果、偽物を売る人や、偽物でないことを確認しない人でも簡単にアマゾンで販売できるようになり、結果アマゾンで偽物がたくさん販売される事態に至っています。

例えば楽天市場では、日経記者が実験したとおり、出店時の本人確認をかなりしっかりとやっています。特に個人は、信用情報まで含めてかなり厳しく審査され、質の良い出品者のみが集まるモールにしたいという意志をを強く感じます。さすが上場企業という印象です。

一方でアマゾンは、まずは広く出品者を募り、その後問題のあるアカウントを排除しようという方針が感じ取れます。まさに米国的なプラグマティズムです。

多くの日本企業は、日本人の誰もが知っている有名企業がこんなに雑にサービスを提供するなんて信じられないと思っていますが、まずは出品者に広く門戸を開き、問題のあるユーザーを事後的に排除するのが最も費用対効果がよいというプラグマティズムに基づいた価値観を理解する必要があります。

もちろん、アマゾンも「アマゾンブランド」を重視していて、「アマゾンは偽物がたくさん売られるマーケットプレイス」というイメージがついてしまうことを決して望んではいないのです。

当所も業務でアマゾンの中の人とやり取りする機会は多くありますが、これまでに「偽物を売ってでも手数料を稼ぎたい」と思っていると感じたことは一度もありません。アマゾンも、偽物や偽物販売者はすべて排除したいと常に思っています。

ただ、アマゾンのシステムは米国から輸入されたものであり、日本独自の対応がほとんどできないというジレンマがあります。アマゾンのシステムは米国でも批判を浴びていますが、法制度や文化慣習の差から、日本ではより大きな問題を生じているように思います。

いまや日本のアマゾンは日本企業(アマゾンジャパン合同会社)なわけですから、日本の商慣習により適するよう変わっていくことが望まれます。

ところでアマゾンでは、ユーザーの識別にIPアドレスを利用していると言われています。そのため、シェアオフィスのように複数の事業者が1つのIPアドレスを共有する場合、ある事業者が規約違反でペナルティを受けると、同一オフィスの全事業者が同時に出品停止になったりします。これも、広く出品者を募り、その後問題のあるユーザーを合理的に排除しようというアマゾンのドグマを象徴する事例のひとつのように思います。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています

アマゾンの模倣品対策 – Part 1 – カタログ方式の罠

相変わらずアマゾンでの模倣品対策のご相談を継続的に受けます。

一部は未だに相乗り排除に関するものもありますが、最近は模倣品対策に関連するものがほとんどを占めるようになりました。

メーカー担当者の間では、アマゾンでの模倣品対策は難しいという事実は広く知られるようになってきました。例えば以下に面白い記事があります。

Amazon、偽ブランド品を推奨 AIが見過ごす (日経新聞)

そもそも日本で偽ブランド品が売られているのか?と思われるかもしれませんが、実はたくさんあります。偽ブランド品にもいろいろな種類がある(例えばパロディ商品を含むのかなどの議論があります)のですが、わかりやすい「ザ・ニセモノ」も、ECを中心にたくさん売られているんです。

ECショッピングモールは集客力が大きいので、本物の商品に紛れさせて偽物を売る輩が跡を絶ちません。その中でも特に対策が難しいのは、アマゾンです。理由はいろいろあるのですが、やはりカタログ方式という特殊なサイト構成が最大の原因です。

カタログ方式とは、「同じ商品は同じ商品ページで売る」という方式です。例えば出店型の楽天市場では、同じ商品であっても、出品者がそれぞれ商品ページを作ります。つまり同じ商品に対して、複数の商品ページが並列的に存在することになります。

一方でカタログ方式を採用するアマゾンでは、同じ商品に対して作成される商品ページは、1つのみです。一番最初にその商品を販売する人が商品ページを作成し、二番目以降に出品する人は、既存の商品ページに出品をします。その商品の販売ページが存在するのに、新しく商品ページを作成することは規約違反です。

アマゾンの考えは、同じ型番の商品は誰が売っても中身は同じなんだから、商品ページは1つにまとめた方がシンプルだ、というものです。これは実際そのとおりだと私もユーザーの立場では思うのですが、本物の商品ページに偽物を紛れさせて売ることが可能なので、模倣品対策が非常に難しくなってしまいます

なにせ、商品ページ自体は本物なのです。商品画像も、タイトルや説明文のブランド名もすべて本物なのですから、商品ページの情報からその商品が偽物であることを見破るのは、技術的に不可能です。

さらにいえば、試買(本物か確かめるために実際に商品を買ってみる)をしてみて、届いた商品が偽物だったとしても、それが「混合在庫」であった場合は、その商品を誰が販売したか、購入者にはわかりません。(これは多少複雑なので別の機会に記事にします。)

カタログ方式を採用するECモールは、日本の大手ではアマゾンのみです。楽天市場、Yahoo!ショッピング、Wowma、ヤフオク、メルカリ、Qoo10、いずれも出店型ですので、モール内で仮想店舗を開店するイメージです。同じ型番の商品であっても、各店舗が「売り方」「見せ方」に独自性を出してそれぞれ商品ページを作成しなさい、という仕組みになっています。

これはユーザーとしては不便に感じることもあるのですが、模倣品対策という観点からはありがたい制度です。なぜならば、偽物を売る人が、偽物の商品の販売ページを作成するわけですから、画像や文章などの情報に不自然な点が見られることが多く、サイト上のみで商品が偽物であることを判断しやすいからです。

このような事情で、そもそもアマゾンは他のモールと比較して模倣品を発見しづらいのですが、アマゾンでの模倣品対策が難しい理由は、他にもあります。上記日経の記事ではその点にも触れているので、次回以降詳しく解説していくことにします。

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