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知財業界での初体験 – 弁理士の日記念ブログ企画2019

ということで今年もやってきました、弁理士の日。そう、本日7月1日は弁理士の日です。たぶん弁理士制度が始まった日です。

毎年この日に、「独学の弁理士講座」の内田先生がブログイベントを企画してくださっています。前ブログから引き続き、今年で5年くらい続けての参加となります。

今年のテーマは「知財業界での初体験」ということで、何を書こうかこのところずっと考えていたのですが、弁理士になって10年以上経ち、当初のことはほとんど覚えていません。

おそらく最初は中間処理などをしていたはずなのですが、当然自分が出願した案件ではないですし、記憶にありません。初めての特許出願、初めての翻訳、初めての拒絶査定、初めての審判請求、初めての特許庁への電話、初めての外国代理人の営業対応・・・ダメです、何ひとつ覚えていません笑

手続的なことは何も思い出せないので、初めて中国・義烏に行ったときの話を書こうと思います。

私は数年前に、中国浙江省の義烏という街に駐在していたことがあります。そのあたりはこの記事などで紹介しているのでご興味ある方はお目通しください。

駐在といっても、ある日思い立って「中国に出張所を作って国際化だぜイヤッホー!」と縁もゆかりもない土地にスーツケースひとつでフラッといきなり移住しただけなのですが、もちろん引っ越す前には出張ベースで何度か行っていました。

義烏には、世界最大の卸売市場、通称「福田市場」があります。とにかく巨大な市場で、雑貨・日用品ならば見つからないものはまずありません。

福田市場の2区。1〜5区からなります。

初めて福田市場を訪れたときのことは、いまでもよく覚えています。上海でちょっとした用事があり、そのついでに義烏にも寄ったのですが、それまで中国には広州など南方にしか行ったことがなく、初めての上海、そして義烏だったので、トラブル続きでした。

ネット情報では「上海南駅」から特急で行くと書いてあったのですが、前日の食事で一緒だった中国人から「いまは上海虹橋駅から新幹線が出てるよ」と聞き急遽ルート変更。たまたま泊まっていたホテルが虹橋駅に近かったのはよかったのですが、駅で英語がまったく通じない。外国で列車のチケットを買うのに困るという初体験をしました。

帰りはもっと大変だったのですが、知財と関係ない話はtogetterにまとめたのでそちらをご覧ください。

さて福田市場に行ってみて、小さいブースが無数に並び本当に何でも売っている様子を目の当たりにして、心底圧倒されたのをよく覚えています。当時の写真ではありませんが、こんな感じです。

2日半かけて端から端まで見て歩きました。完全に足が棒でした。

訪問前から、「何か買って帰国後にヤフオクで売れば旅費くらいでるよ!」と聞いていたので、探しながら歩いていたのですが、とにかくあらゆる商品が売っているので、何を買っていいのかわかりません。

そんな中、たまたま目についた商品がありました。キャラクターものでした。

写真が残っていないので、同種の商品を探してきました。これです。

出典: THE MARY SUE

おわかりの方も多いと思います。Angry Birds のUSBメモリです。

Angry Birds は世界的に人気のスマホゲームで、上記商品はそのキャラクターを用いたものです。値段やロット、詰め合わせの条件などを交渉して、よさそうなので買おうということになり、最後にいろいろ雑談をしていると、出身地の話題になりました。

「ん?日本だけど」「えっ、日本?!ダメダメ、これは売れないよ!」

「なんでだよ!まさかこれ・・・コピー・・・?!」「日本では売っちゃダメだよ(てへ」

そう、ただの偽物だったのです。

この店は同様にキャラクターもののUSBメモリをたくさん売っていました。まさか「ザ・偽物」をこんなに堂々と売っているとは、当時の私は思いもしませんでした。世間知らずだった私は、偽物は悪いやつらがコソコソ裏ルートで取引していると思っていたのですが、日本を少し離れた世界の現実を目の当たりにして、大きな衝撃を受けました。

この体験が、私を模倣品対策の道に進ませました。Angry Birds は外国企業のキャラクターですが、ジブリやワンピースなど、日本のキャラクターの商品もたくさんありました。いま振り返れば、ほぼすべてコピー品だったのでしょう。

こうした商品がこんなに堂々と売られる世界はなんとかしないといけない。そう思って義烏に行って模倣品対策を本格的に始めました。

これが私の「知財業界での初体験」です。

その後いろいろと勉強する機会があり、偽物にもいろいろな種類があって、対策もそれぞれ異なることを知りました。これらの話はまたいずれ。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています

アマゾン・トランスペアレンシーってなに?

アマゾントランスペアレンシーというプログラムがあります。

アマゾンブランドレジストリー(アマゾンのブランド保護施策)の一環()で提供されているプログラムで、現段階では米国のみで展開されています。

ざっくり紹介すると、アマゾンが発行するQRコードを商品パッケージに貼っておくと、FBA納品時にアマゾンが真正品であることを確認してくれるというものです。

コードが偽造されている場合など、真正品と確認できないときは、偽物と推定されて、アマゾンの模倣品排除プログラムに従って処理されます。

コードは商品単位(※型番単位ではなく、個々の商品ごとにユニークな文字列)で与えらます。なので、ある商品を購入してみて、そのコードをコピーしてももう遅いというわけです。

アマゾンから発行されたコードが商品に貼られていると、アマゾンは正しいコードが貼られた商品のみを真正品として扱うので、少なくともFBA経由では模倣品が販売されなくなることになります。

これまでアマゾンには、権利者から、フルフィルメントセンター(倉庫)に納品された商品の真贋判定をしろ(つまり「あんたの倉庫に偽物が入っているんだから人間の目でチェックしてこい」)というプレッシャーがかけられていましたが、納品された商品が本物か偽物かをアマゾンが判断することは現実には難しく、厳しい対応を迫られていました。トランスペアレンシーはそれを解決する手段といえます。

さらにトランスペアレンシーは、アマゾン外の店舗で販売される商品でも利用できます。例えばスーパーで売られている商品のQRをスマホアプリで読み取ることで、購入者はその商品が本物かどうかチェックすることができます。

つまりアマゾンは、FBA納品時には自らコードをスキャンして本物かチェックしますし、そのシステムを外部にも提供してどこでも誰でも真贋チェックができるようにしているのです。

なおオマケの機能として、メーカーは、製造日や製造地、その他パッケージに書ききれない情報をコードに持たせることができます(ユーザーはスマホ画面で確認できます)。

例えばロットごとに細かい情報が変わる商品ならば、都度パッケージを作り直さなくても、トランスペアレンシーで顧客に情報開示できるかもしれません。

というなかなか便利なプログラムなので、昨年米アマゾンの法務担当者と話をしたときに早く日本にも導入しろと言ったところ、2019年度に導入予定という回答がありました。そろそろ半分が終わりますが、さて間に合うでしょうか。

なお、これまで米国でも、パワーブランドというか模倣品対策においてアマゾンと協力関係の強いところから順にトランスペアレンシーに参加できましたが、いまは広く受け付けているようです。クライアントに紹介しろと連絡がきたので、ブログ記事にしてみました。米アマゾンで販売されているメーカーさんは参加を検討されてみたらいかがでしょうか。

(※)アマゾンブランド登録は、複数のプログラムからなります。ブランド登録は日本でも提供されていますが、いまのところ Notice and Takedown にのみ対応しています。今後他のプログラムも順次追加されるものと思われます。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています

アマゾンの模倣品対策 – Part 1 – カタログ方式の罠

相変わらずアマゾンでの模倣品対策のご相談を継続的に受けます。

一部は未だに相乗り排除に関するものもありますが、最近は模倣品対策に関連するものがほとんどを占めるようになりました。

メーカー担当者の間では、アマゾンでの模倣品対策は難しいという事実は広く知られるようになってきました。例えば以下に面白い記事があります。

Amazon、偽ブランド品を推奨 AIが見過ごす (日経新聞)

そもそも日本で偽ブランド品が売られているのか?と思われるかもしれませんが、実はたくさんあります。偽ブランド品にもいろいろな種類がある(例えばパロディ商品を含むのかなどの議論があります)のですが、わかりやすい「ザ・ニセモノ」も、ECを中心にたくさん売られているんです。

ECショッピングモールは集客力が大きいので、本物の商品に紛れさせて偽物を売る輩が跡を絶ちません。その中でも特に対策が難しいのは、アマゾンです。理由はいろいろあるのですが、やはりカタログ方式という特殊なサイト構成が最大の原因です。

カタログ方式とは、「同じ商品は同じ商品ページで売る」という方式です。例えば出店型の楽天市場では、同じ商品であっても、出品者がそれぞれ商品ページを作ります。つまり同じ商品に対して、複数の商品ページが並列的に存在することになります。

一方でカタログ方式を採用するアマゾンでは、同じ商品に対して作成される商品ページは、1つのみです。一番最初にその商品を販売する人が商品ページを作成し、二番目以降に出品する人は、既存の商品ページに出品をします。その商品の販売ページが存在するのに、新しく商品ページを作成することは規約違反です。

アマゾンの考えは、同じ型番の商品は誰が売っても中身は同じなんだから、商品ページは1つにまとめた方がシンプルだ、というものです。これは実際そのとおりだと私もユーザーの立場では思うのですが、本物の商品ページに偽物を紛れさせて売ることが可能なので、模倣品対策が非常に難しくなってしまいます

なにせ、商品ページ自体は本物なのです。商品画像も、タイトルや説明文のブランド名もすべて本物なのですから、商品ページの情報からその商品が偽物であることを見破るのは、技術的に不可能です。

さらにいえば、試買(本物か確かめるために実際に商品を買ってみる)をしてみて、届いた商品が偽物だったとしても、それが「混合在庫」であった場合は、その商品を誰が販売したか、購入者にはわかりません。(これは多少複雑なので別の機会に記事にします。)

カタログ方式を採用するECモールは、日本の大手ではアマゾンのみです。楽天市場、Yahoo!ショッピング、Wowma、ヤフオク、メルカリ、Qoo10、いずれも出店型ですので、モール内で仮想店舗を開店するイメージです。同じ型番の商品であっても、各店舗が「売り方」「見せ方」に独自性を出してそれぞれ商品ページを作成しなさい、という仕組みになっています。

これはユーザーとしては不便に感じることもあるのですが、模倣品対策という観点からはありがたい制度です。なぜならば、偽物を売る人が、偽物の商品の販売ページを作成するわけですから、画像や文章などの情報に不自然な点が見られることが多く、サイト上のみで商品が偽物であることを判断しやすいからです。

このような事情で、そもそもアマゾンは他のモールと比較して模倣品を発見しづらいのですが、アマゾンでの模倣品対策が難しい理由は、他にもあります。上記日経の記事ではその点にも触れているので、次回以降詳しく解説していくことにします。

お読みくださりありがとうございました。ご意見・ご質問をお待ちしています